作成日:2018/10/28 最終更新日:2021/01/31 かいたひと:松崎有理
ついに念願のポルトガルにやってきました。檀一雄先生のエッセイに魅了されてはや十数年。新田次郎先生の『孤愁』も読んで準備万端。拙著『5まで数える』表題作の舞台はマカオで、その宗主国でもあります。https://t.co/9yoESfgeNP pic.twitter.com/kSE76ijy9I
— 松崎有理(作家)公式 (@yurimatsuzaki_n) 2018年10月3日
2018年10月。ポルトガルへ二週間の旅行にいってまいりました。
事前にいろいろ調べたつもりだったけど、現地へ着けばおどろきの発見ばかり。以下ではその情報をシェアします。
気温とかコンセントの形状とか世界遺産とか、ちょっとググればわかるようなことは省きます。つまり、ポルトガルへ行ってみたくてすでにひととおり調べてみたひと向けの記事です。
【もくじ】
1,ポルトガルぜんたいについて
2,第二の都市ポルト
3,石の町モンサント
4,首都リスボン
附1,個人旅行者のためのサバイバルポルトガル語——最低限これだけはおぼえよう
附2,ポルトガル情報源として信頼できる書籍とウェブサイト
附3,ポルトガルを愛した人びとのことば
1,ポルトガルぜんたいについて
意外にも、トイレがきれい
隣国スペインの阿鼻叫喚状態にくらべるとそのちがいが際立ちます。さらにいえば、おそらくヨーロッパでもっともトイレがきれいな国かもしれません(チェコのように有料トイレが多い国は勘定に入れません)。しかも古い設備をていねいに清掃しているので、管理者の良心みたいなものがつたわってきます。
ポルトガルのいいところ①トイレがものすごくきれい(スペインでは数えきれないくらいなんども泣きながらトイレ掃除してから使った)②たとえ一個1ユーロのお菓子でもきちんと箱に入れてくれる(フランスでは紙袋) pic.twitter.com/OtDk7AjBeg
— 松崎有理(作家)公式 (@yurimatsuzaki_n) 2018年10月5日
意外なほど英語が通じる
すくなくとも、観光客がいるような場所で意思疎通に困ることはありませんでした。メニューも英語併記のところが大多数。敷居の高そうな有名ファドレストランでも英語で電話予約できました。それでも挨拶や基本語彙は知っておいたほうがよいので、下のほうにまとめましたよ。
ポルトガル人は意外なほど勤勉
おなじ南欧のスペイン人やイタリア人と比べると驚くほどきちんと仕事をします。すみません偏見もってましたここで謝罪いたします。地元のタクシーを二回予約して、二回とも時間どおりにきてくれました。地下鉄、国鉄もおおむね時間通り運行。路面電車はちょっと特殊なので下の別項で。
これは意外でないかもしれないけど親日
カタコトから流暢レベルまで日本語をしゃべれるひとがけっこういて、「日本人か」と話しかけてくれます。中国人とまちがわれたのはリスボン中心部の観光地で一回のみ。これが他国では「ニイハオ」「ノン。ジャポネーズ 」という展開になるのがふつう。とはいえアジア人ぎらいなひとが皆無ではないのでそこはがまん。
これもあまり意外ではなかったが、自動券売機など機械系インフラが脆弱
こつは、ゆっくり操作してあげること。画面表示の数秒の遅れなんてざらです。また機械が4台あるうち1台つかえれば御の字だということもおぼえておきましょう。この国では忍耐の心がつちかわれます。これで時間を食われることが多いので、旅行計画はゆとりを持って。
これもあまり意外ではないがワインが激安
100パーセント国産。日本で買うと高いヴィーニョ・ヴェルデなんて一本2ユーロ以下がほとんどでした。しかも衝撃のうまさ。いままで高い金を払って飲んでいたのはなんだったのだろうと首をかしげるレベルでした。
リスボンのスーパーにて。これがぜーんぶポルトガルワイン。日本ではそうとうレアアイテムなので気分があがります。しかも一本数ユーロと激安。引退したらポルトガルに住みたくなりました。 pic.twitter.com/wEEgKPBVcA
— 松崎有理(作家)公式 (@yurimatsuzaki_n) 2018年10月9日
意外にも、ビールもうまい
スペインやイタリアのビールと似た感じだがはるかにさっぱりと上品な味。しかも生でも瓶でも1ユーロからと激安価格。北部のSuper Bock、南部のSAGRESが二大ブランドでどちらも同じような味わいでした。
檀一雄先生おすすめ、ビールを瓶から直に飲む方法を試してみました。びっくりするほどおいしいのでみなさんもぜひ。なお写真は沢木耕太郎さんの『深夜特急』にも登場するポルトガル南部のビール「サグレス」。 pic.twitter.com/q2msVANqMb
— 松崎有理(作家)公式 (@yurimatsuzaki_n) 2018年10月13日
意外にも、クレジットカードが使えない
松崎の経験上、ヨーロッパでもっともカードが使えない国。とはいえATMの使い方はすごくかんたんでしかもどこにでもあり、かつ物価が安いためそれほど深刻な事態にはなりませんでした。ATMで大きな金額を指定すると50ユーロ札が出てきてしまうけれど、ファドレストランなど高級店で使えば拒絶されません。
意外にも、郵便局(CTT)がいい仕事をする
平日は21時まで、土曜は18時まで営業(ほら勤勉でしょ。日本の郵便局もみならってほしい)。荷物を海外に送りたければ、いろんなサイズの専用ボックスが用意されているので購入すればよいだけ。発泡スチロールでできたワイン専用箱さえあって、観光客の需要をよくわかっています。箱を閉じたらシールを貼ってくれるのでガムテープ持参不要。英語を話せるスタップもいてなにからなにまで手伝ってくれ、筆記具さえ貸してくれます。切手は専用自販機があるので番号札を引いて並んだりせずに買えます。しかし、これほど充実しているのになぜかクレジットカードは使えないのです。
ポルトガルの郵便局にはワインを送るための専用の箱が用意されており、気軽に送れるようになっています。
日本へ三箱送ってみましたが、送料は約80ユーロでした。 pic.twitter.com/AKI9m69XiA— white-rabbit (@XRayCT) 2018年10月9日
おみやげ品
ガロのワインストッパーはあくまで観賞用。実用品ではありません。
つぎからは地域別ハックです。
2,第二の都市ポルト
路面電車
市民の足というより観光用。本来は博物館に展示されているはずの車両を引っぱりだしてきて使っています。とうぜん観光客に大人気。公式サイトの路線図がわかりやすいのでリンクを貼っておきますね。
注意点としては、乗り方が独特。電停がある場所とない場所があります。ない場所では運転手に対し手をあげるなど意思表示をすると止まってくれます。ゆだんならないのは電停がある場所で、ただ立っていても止まってくれません。同様にジェスチャーで乗ります、と伝えましょう。
ポルトでは都電荒川線もまっさおのレトロな路面電車が現役で走っています。博物館の展示物を観光用に使っているとか。オールドファッションな外見にもかかわらず車内では無線LANが使えます。 pic.twitter.com/xkShy37hH9
— 松崎有理(作家)公式 (@yurimatsuzaki_n) 2018年10月7日
サン・ベント駅
ときどき有人窓口におそろしいくらいの行列ができていることがあってげんなりします。それは窓口がひとつしか開いていないせい。数時間ずらしてまたきてみてください。窓口が複数開いていて、こうなるとスムーズに業務が進みます。窓口のひとは英語を話せて親切です。クレジットカードも使えます。
ポルトの、ここは行っとけレストラン
Restaurante Casa Aleixo メニューのタコ料理はもちろん絶品ですが基本なにを頼んでもうまい。ポルト名物トリパスはここで食べたが驚愕のうまさ。松崎がいちばん感動したのはハウスワインの赤でした。なおタコはポルトガルでも高級食材らしくタコ料理は(ここだけでなくどの店でも)やや高め。日本語メニューもあるのですけどテーブル係のひとは日本語がわからないので、けっきょくは英語かポルトガル語で注文することになります。
ポルトの、ここは行っとけケーキ屋さん
Confeitaria do Bolhão 旧ボリャオン市場前のケーキ屋さん。松崎のだいすきなボラ・デ・ベルリン Bola de Berlim はここがいちばんおいしいと思いました。他店とちがってなかはカスタードクリームです。ちょっとお上品ですが値段はひかえめ。
ポルトの、ここは行っとけジェラート屋さん
Gelataria Portuense ジェラートといえばフィレンツェの Perche No! がいちばんかと思っていたけど撤回。松崎はこっちのほうがずっと好みの味です。
3,石の町モンサント
公共交通機関が脆弱という噂はほんとう
出発時間や慣れない乗り換えを気にしながらバスを使うよりタクシーを呼んで効率化したほうがよいと思います。下はあたり運転手さんの名刺。ぜひご指名ください。
モンサントの往復は公共交通機関よりタクシーが便利です。写真の運転手さんは英語ができて時間に正確で明朗会計でモンサントに家族と住んでいます。けっきょく松崎たちは往復ともお世話になりました。 pic.twitter.com/ERLjR7h9hi
— 松崎有理(作家)公式 (@yurimatsuzaki_n) 2018年10月9日
松崎は予約がとれずに泊まれなかった石めりこみ感あふれるホテルふたつ
- Taverna Lusitana どういうわけか日本人に大人気の宿
- Casa do Chafariz 理想的な石めりこみぐあい。バスタブありで6000円ほど。なお無線LANがないのが致命的
日曜日に着いちゃったひとのために
日曜でも営業しているレストランは二軒あります。Petiscos & Granitos のほうがおすすめ。石めりこみテラスと夕陽が沈む壮大な景色が堪能できます。価格はやや高めだが前菜からデザートまでなんでもうまいし日本人にとって量がほどよい。例によって松崎はハウスワインに感動しました。猫が二匹いてどっちも美人。おおむねモンサントの猫はみな美人で、犬はブサカワイイ。
街に一軒しかないコーヒーショップも日曜営業していてビールや軽食をとれます。なお生ビール(SAGRES)は1ユーロ。雑貨屋も営業しており土産物、菓子や軽食、水やワインやビールを買えますよ。
服装など
町歩きというよりトレッキングの装備で出かけましょう。とくに靴は要注意。
名所である城跡はほぼ登山。なお頂上は、高所恐怖症のひとが行っても楽しめないと思います。だって手すりないんだもん。
トイレ事情
記事冒頭でポルトガルのトイレのきれいさをたたえましたが、なかでもモンサントは群を抜いています。インフォメーションセンターのトイレはもちろん、町のなかに数か所ある公衆トイレまでがきれいで、しかもペーパーがちゃんとあるのです。スペインやイタリアで痛めつけられた日本人にとっては天国のような場所。安心してビールいっぱい飲めます。
4,首都リスボン
路面電車
ここでは市民もいちおう利用していますが、めっちゃ混む(混みすぎて乗れないことも)+時間が不規則で、メインの交通機関としてとても実用的とはいえません。なおポルトとちがってちゃんと電停があるけど乗車意思表示はしたほうが無難。降りたいときは車内にみっつしかない赤いボタンを押します。すると運転席上の「PARAR」(つぎ止まります)というライトが点灯し、まちがいなく停車してくれます。
国立古美術館
おおかたの観光客がスルーする超穴場。ただし、ここへ行く路面電車(15番線)が世界遺産ジェロニモス修道院方面にも行くためなかなか乗れず、アクセスがとにかくたいへんでした。
リスボンの国立古美術館にてヒエロニムス・ボスの「聖アントニウスの誘惑」鑑賞。あのボスの作品なのに信じられないほどゆったりみられます。ほか、ヴァン・ダイクやクラナッハなどがじつにさりげなくおかれていてなにげに贅沢な展示。お庭のみえるカフェは甘味から本格的なランチまでそろっており、無線LANも入っています。しかしミュージアムショップは貧弱。pic.twitter.com/fr4X4IOQ6v
— 松崎有理(作家)公式 (@yurimatsuzaki_n) 2018年10月10日
パステイス・デ・ベレン
パステル・デ・ナタがおいしい店として有名ですが、松崎がいちばんうまいと思ったのは卵のロールケーキ Torta enrolada 1.4ユーロ。なおものすごく混むので開店直後の8時ごろいくのがよいでしょう。
鳥ずきなひとへ
ベレンの塔ちかくの Praça do Império で雀や水鳥に餌をやれます。レストランで食べきれなかったパンをもらっておきましょう。あまったパンは捨てられちゃうんですよ。松崎は早朝のレストラン前のごみ箱で大量の廃棄されたパンを目にしました。MOTTAINAI!
治安
松崎はアルファマ地区に泊まりました。まわりは地元のひとばっかりで、治安の悪さは一切感じませんでした。ロシオ駅付近はさすがに国際色豊かでちょっと怖い感じもしましたが、それでも危険な目にはいちども遭わず。
もちろん「おおっぴらに地図を広げない」「iPhone を出さない」「貴重品はカバンではなく服のなかへ」などの基本を守ったうえでの話です。いくらポルトガルの治安がよくても自衛はじゅうぶんに。一瞬の油断で楽しい旅行がだいなしになります。
リスボンの、ここはいっとけレストラン
- Tosca do Manel
うまいだけでなく量がほどよい。Arroz de Pato(鴨ご飯)がとてもおいしい。テーブル係のひとがカタコト日本語で「かもー」「ぶたにくー」とメニューを説明してくれてとてもなごむ。こちらもお返しに怪しげポルトガル語で注文した。
- O Pitéu うまいのだが量がとんでもなく、しかも小盛りサイズ meia dose がない。さいわいデザートはほどよい量。パンがものすごくおいしそうだったけどとても食べられなかった。
高級チョコレート専門店 Chocolataria Equador
いちばんのお値打ち品は、じつは奥のカフェスペースのメニュー。たった3ユーロで大きなカップいっぱいのホットチョコレートがきて正直ひとりでは持てあます量。ほか、カフェとトリュフのセットが2ユーロくらいなのできがるに試食体験ができます。
なおこのお店、バレンタインシーズンには日本にもきています。松崎の知るかぎり日本ではタブレットしか販売していないので、イワシ型のかわいいチョコレートを買いたいかたはポルトガルへいきましょう。
カステラの先祖、パォン・デ・ロー
菓子屋で買ったものはもちろんそこらのスーパーで買った安物でもすごくおいしい。
なお下のツイートはリスボン市内の老舗カフェ「ア・ブラジレイラ」のもの。パォン・デ・ローというととかく巨大なイメージがありますが、ここのものは手のひらサイズで小食なひとでもいけます。
カステラの祖先、パン・デ・ロー。
確かに「祖先」という味がします。 pic.twitter.com/Eu4pR47sRK— white-rabbit (@XRayCT) 2018年10月9日
そのほか、気づいたこといろいろ
- おおむねなんでも、ポルトのほうが安くてうまい。街はポルトのほうが清潔、と感じました。
- TukTukが走っていたり洗濯物がひるがえっていたり魚が焼かれていたりとむやみにアジアっぽい。そういえば料理にしばしばパクチーが入っていて松崎は困りました。
- フレッシュチーズは豆腐によく似た味。塩はかけないほうがいいと思います。
- ベレンの塔のなかにはトイレがありません。近隣カフェなどで済ませましょう。公衆有料トイレもあります。0.5ユーロ。こんなときのために小銭は携帯しましょう。
- リスボン市内は貝化石だらけ
ポルトガルの世界遺産であるジェロニモス修道院の床石には、大量の厚歯二枚貝が含まれています。
というか、リスボンはそこらじゅう厚歯二枚貝だらけです。最初は珍しくて観ていたのですが、途中からどうでもよくなりました。#化石の日 pic.twitter.com/houfL42iCN— white-rabbit (@XRayCT) 2018年10月13日
- チキンは激安
鶏はんぶん約200円とかリスボンのお惣菜事情が天国すぎて。 pic.twitter.com/HVvC23eibq
— 松崎有理(作家)公式 (@yurimatsuzaki_n) 2018年10月10日
- メラオン melão
メロンのこと。きんきんに冷えててすっきり甘くて真剣にうまいのでぜひ試して。個人的に、あの甘みは和三盆糖に似ている気がします。つまり上品。ただし例によって巨大なので2〜3人でシェアする感じで。
附1,個人旅行者のためのサバイバルポルトガル語——最低限これだけはおぼえよう
注意:以下に出てくるポルトガル語の文章はあくまでサバイバル用で、文法的に正しくない可能性がありますことをご留意ください。
ポルトガル語オーバービューとおすすめ教材
あたりまえだけど、スペイン語に似ています。でもスペイン語よりずっと難しい。松崎はロマンス語としてスペイン語のほかにフランス語、イタリア語をかじりましたがポルトガル語がだんとつに難しく感じました。その理由はたぶん人称代名詞。
発音はスペイン語よりずっとおだやかな感じ。国民性を反映しているのでしょうか。とにかく、日本人にとっては発音しやすいと思います。発音規則もフランス語ほど複雑ではありません。
なお、日本で手に入るポルトガル語教材の大半はブラジルポルトガル語なので注意が必要です。ポルトガルで話されているのはイベリアポルトガル語。日本で教材を探し出すのがけっこうむずかしい、というかブラジルポルトガル語の教材かイベリアポルトガル語の教材か区別をつけるのがとてもむずかしい。
松崎があみだした簡便な方法は、表紙やアイコンにポルトガル国旗が使われていたらそれはイベリアポルトガル語教材というもの。ご参考までに。
イベリアポルトガル語のバイブル的存在はつぎの一冊:
- 『しっかり学ぶポルトガル語』カレイラ松崎順子
著者と名字がいっしょなので親近感がわきますが松崎は短期旅行でここまで必要ないと思いました。
じっさいに松崎がつかった教材は:
書籍
- 『ポルトガル (絵を見て話せるタビトモ会話―ヨーロッパ) 』
お買い物用語がひととおりわかります。ボディランゲージの説明がなにげに便利。とくに「お会計」のサインはつねに一発で通じてとても重宝しました。巻末に文法事項がまとめられていて、これに目を通しておくだけでもずいぶん理解が深まります。玖保キリコさんのまんがもすてき。「これがサウダーデか……」とか。 - 『地球の歩き方 ポルトガル』
語学教材ではなくガイドブックですがポルトガル語情報も多く、とくにメニュー用語が豊富で助かりました。あまりにも豊富なので辞書がわりにつかえるほど。
アプリ
- Simply Learn Portuguese – Travel Phrasebook by Simya Solutions Ltd.
なんといってもネイティブ音声がきれいなところがおすすめポイント。このなかのいくつかのフレーズをブックマークしておいて繰りかえし聴いて暗記しました。オフラインで使えます。 - Portuguese English Dictionary
こちらは音声はいまいちですが、わからない単語をどんどん引いてブックマークしてストックしておけるのが便利。男性名詞・女性名詞の区別があるのもいい。こちらもオフライン使用可。
あいさつ
スペインとちがって簡略版あいさつの Ola! はめったに使われません(だからポルトガル人って律儀な感じがする)。よって、
Bom dia.(朝〜正午ごろ)
Boa tarde.(午後いっぱい、暗くなるまで)
Boa noite.(暗くなってから)
の三種類が口からすぐ出るよう徹底して体にたたきこみましょう。なおこれらは別れのあいさつにもつかえます。現地のひとたちは Adius.よりは気軽な感じで使っていたように思いました。
お礼
Obrigado.「ありがとう」はどの言語でも必須のフレーズ。これも反射的に出るよう体にたたきこんでおくこと。女性のばあい Obrigada.にすべきとものの本に書いてあるけれど、じっさいそのように発話している女性は現地では数えるほどしかいませんでした。
感謝の気持ちを強調したいときは Muito obrigado。この muito という副詞は便利なのでぜひ覚えて。たとえば Muito bon.「とてもおいしい」などと使います。
なお「いりません」「けっこうです」などとやわらかく断りたいときは Non, obrigado. といいます。
相手に Obrigado. といわれたら De nada.「どういたしまして」と返せるとかっこいい。
謝罪
Descupe. 謝りたいときの台詞。ウエイターさんがオーダーをまちがったときなんかに使っていたので、「失礼しました」くらいのニュアンスなのかも。
よびかけ
男性には Senhor、女性には Senhora。フランス語の Monsieur、Madame とほぼ同様に使える。
ていねいに
Por favor.「おねがいします」必須フレーズ。ていねいにおねがいしたいとき文末につけましょう。
数詞
あなたの旅行グループの人数(三人で旅するなら3)までいえればじゅうぶん。あとは無理せず、メモとペンをもちあるいて相手に数字を書いてもらいましょう。しかし、ヨーロッパの手書き数字は独特で慣れないと読めないので予習すること。なおポルトガル語はほかのロマンス語とちがって1だけでなく2にも男性形と女性形がありますが、おおむね男性形のほうだけでわかって(=許して)もらえました。でも1の男女をまちがえると直される。厳密なんだかどうなんだか。
トイレ
casa de banho. 必須表現。「トイレはどこですか」は正しくは Onde é a casa de banho? だけど、 Casa de banho? だけでじゅうぶん通じます。状況が助けてくれるのですね。
レストランやカフェで
「お勘定お願いします」は A conta, Por favor. だけど『タビトモ会話 ポルトガル』に載ってるジェスチャーのほうがはるかに通じます。
メニューは英語名が併記されているケースが多いけれど、ポルトガル語を知っていたほうがどんな料理か想像がつきやすくなります。すくなくとも自分のたべたい料理名くらいはポルトガル語で覚えていきましょう。なお松崎が真っ先に覚えたのは Frango assado「ローストチキン」でした。
meia dose は半分サイズの意味(実際でてきた量をみると「小盛り」くらいの感覚)。ポルトガルのレストランはとにかく量が多いので、食べたいメニューがきまったら Tem meia dose? 「小盛りありますか」ときいてみましょう。お店によってはない場合もあります。
料理がおいしかったらぜひ Muito bon.「とてもおいしい」といってほめましょう。
買い物
「これ、いくらですか」Quanto costa? もちろん数字を言われても聞きとれないので、メモに書いてもらいます。
「これと、あれください」(指さしながら)Isto, e isso. これくらいブロークンでもなんとかなりました。
便利な表現
Posso〜?「〜してもいいですか」英語の May I〜? とほぼ同義。具体的な使い方は、クレジットカードを出してみせて「Posso〜?」といいながら首をかしげると「ここではクレカで支払いできますか」の意味になります。かんたんなうえにていねいなニュアンスがあるのでとても便利。ぜひ使ってください。なおイタリア語にもまったく同じ表現があります。
おまけ・ポルトガルでの英語
- 「持ち帰りで」は To go ではなく Take away。なんかこのあたりにもポルトガル人の律儀さを感じる
- 時間表現は24時間制なので、たとえば「ごご3時に」は 15 o’clock と言い換えてあげたほうが親切
- リスボン限定謎英語「May I ?」店員さんとかがよく使います。たぶん「Posso?」の直訳のつもりなんだろうなあと推測
附2,ポルトガル情報源として信頼できる書籍とウェブサイト
文学系
- 『漂蕩の自由』檀一雄
松崎にとってのポルトガル、そもそものはじまり。とくに「アテなしの旅」は傑作。ふらっと現地の居酒屋に入って、現地のひとの飲んでるものを飲む、なんてまねしたくなっちゃいます。 - 『深夜特急 第三便』『一号線を北上せよ』沢木耕太郎
前者は、若かりし日にポルトガルを旅したときの記録。後者では檀一雄伝記執筆のためにポルトガルを訪れた記録が描かれます。しっとりした描写に心動かされます、というよりほとんど中毒性があります。ぜったい旅に出たくなる。 - 『孤愁 サウダーデ』新田次郎・藤原正彦
ポルトガルの文人、ヴェンセスラウ・デ・モラエス Wenceslau José de Sousa de Moraes のおそろしく詳細な伝記。新田先生が連載とちゅうで急逝されたので息子さんの藤原先生がつづきを書いた事情は「あとがき」で明かされており、こちらも本文とおなじくらい感動しました。藤原先生のポルトガル取材道中を綴った『父の旅 私の旅』もあわせてどうぞ。フジワラ節が光っています。ポルトガルは松崎の経験ちゅういちばん「日本人か」と声をかけられる国。中国人にまちがわれたことはいちどもありません。これも、日本に住み日本の魅力を紹介し続けたポルトガルの文人モラエスのおかげでしょうか。写真はリスボン市内の彼の生家。 pic.twitter.com/IbmFJdkmYl
— 松崎有理(作家)公式 (@yurimatsuzaki_n) 2018年10月14日
- 『はしれ! カボチャ』エバ・メフト、アンドレ・レトリア
ポルトガルの昔話を絵本にしたもの。いわゆる「ポルトガル情報」的なものはありませんがとにかくおもしろい絵本なのでおすすめします。プロットが驚くほど整然としていてお手本になります。それと、孫娘の結婚を知ったおばあちゃんのうれしそうな顔が傑作。
実用系
- 『光の街、リスボンを歩く』オノリオ悦子
筆者はリスボン在住なだけあって信頼できるしマニアック。地元民おすすめの店や町歩きの裏技をてんこ盛りで紹介。「この店は日曜日でもやってる」という情報が地味に助かります。惜しむらくは地図がいまいち。 - 『ポルトガルのごはん (絵本 世界の食事)』
ある新しいことがらをざっくり学ぶには児童書が最適。リスボン在住の一家の日常を通して、ポルトガルの食事がどんなものかイラストでやさしく学べます。おかあさんが美人。 - 『レトロな旅時間 ポルトガルへ』矢野有貴見
ポルトガルだいすき矢野さん夫妻の本その1。「はじめてポルトガルへ行く友人をお気に入りスポットに案内するような気持ちで書いた」(大意)だそうです。一冊でポルトガル全土をカバーしているので地方の情報はやや薄めなのが難。 - 『持ち帰りたいポルトガル』矢野有貴見
ポルトガルだいすき矢野さん夫妻の本その2。写真も文章もじつに味があり、愛をこめてポルトガルのダサカワイイ民芸品を紹介しています。松崎はこの本でボラ・デ・ベルリンを知りました。
ウェブサイト
- オラ! ポルトガル すぐ上に挙げた本二冊の著者、矢野さん夫妻のサイト。なんと30回いじょうポルトガルをおとずれています。
- ポルト特派員ブログ 『地球の歩き方』ウェブサイト内。執筆者 Yuka さんはポルト大学に留学中、でしたがもう帰国されたようです。
- ポルトガル流、幸せなライフスタイル
ポルトガルワインと食材のネットショップ、メルカード・ポルトガル内のブログ。すごくおもしろくて情報量豊富なんだけど、なぜかトップページからさがしにくい。
おまけ
- 『マカオ ノスタルジック紀行』芹澤和美
1999年までポルトガル領だったマカオを、カジノとは無縁な視点で紹介する希有な本。著者のマカオ愛がびんびん伝わってくる良書。マカオには石畳も鴨ご飯もエッグタルトもポルトガルワインもあるみたいですよ。マカオ航空の直行便で、ポルトガルへの三分の一の時間で行けます。
(2019/01/19追記)行ってまいりましたマカオ。同じようにググっても出てこない情報を中心に記事をまとめましたのでごらんくださいませ。カジノに行かないマカオ~ポルトガルのおもかげを求める旅
附3,ポルトガルを愛した人びとのことば
- いまこの瞬間、どこに行ってもいいならポルトガルへ行きたい。とても気持ちのなごむ国だ(高倉健)
- リスボンは新旧混合したじつにおもむきのある色彩豊かな街である。急坂が多く古びた市電がどこまでも走っている。どの舗道にもさまざまな石が敷き詰められている(北杜夫)
- 街もひとも日差しもあかるく乾いて色あざやかなスペインに比べ、ポルトガルではなにもかもこころもちくすんで、憂鬱で、湿り気をおびている。日本に似ていてここちよい(岸本佐知子)
(註:正確な引用ではありません。大意をそこねないていどに松崎が手を入れています)
以上は、いち旅行者による個人的見解です。不正確な点がありましたらぜひメールにておしらせください。公式Twitterへのコメントも大歓迎いたします。
【公式サイト更新】じっさいに旅して知ったポルトガル旅行ハックをまとめました。これからポルトガルへ行ってみたい方、ぜひどうぞ。行ったことのある方は、「ここちょっとちがうぞ」と思ったらこのツイートへ返信またはメールで教えてください。https://t.co/43O9lqac7v pic.twitter.com/dWDLE89DAs
— 松崎有理(作家)公式 (@yurimatsuzaki_n) 2018年10月28日
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ポルトガルに興味を持っていただけましたか。
拙著『5まで数える』表題作の舞台は1999年までポルトガルだった街、マカオをモデルとしています。
この記事の続編です。
カジノに行かないマカオ~ポルトガルのおもかげを求める旅
さらに続々編です。
できるだけ本場の味にちかいパステル・デ・ナタを東京で食べる
さらに続々々編です。
ポルトガルに行かなくてもボラ・デ・ベルリンを食べられるのか