理系女子応援企画・その5――名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊



*本稿は取材先の認可を経て執筆、掲載しています。


名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 ロゴ

「みんな、理科がだいすき! 理科の魅力をつたえていきたいと思っています」
(名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 リーフレットより 一部改変引用)



ごあんない:

名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊
名古屋大学 男女共同参画室



「名古屋大学にも、女性研究者支援モデル育成事業としてあかりんご隊がありますよ」
と、東北大学サイエンス・エンジェルの取材時にうかがった。

あかりんご隊の存在じたいは、知っていた。
残念なことにウェブ上の情報があまりにすくなすぎる。せっかくおもしろそうなことをしているのに、もっと宣伝しなくちゃもったいない、というのが正直な感想。
しかし幸いなことに、名古屋市は、現在の松崎の居住地だ。

これは、地の利をいかして取材してこなければなるまい。
おりよく、10月16日は名古屋大学のホームカミングデイ、というイベントのある日で、
このとき、あかりんご隊による公開科学実験が行われるようだ。

事前に、名古屋大学 男女共同参画室に取材のお願いをすると、
なんともうれしいことに、快諾の返信が。
というわけで、当日。いざ、会場である名古屋大学野依記念学術交流館へ。

名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 科学実験

……盛況である。
会場前方が、あかりんご隊メンバーによる科学実験ステージ(写真左)、
会場中央から後方にかけて、丸テーブルが五つほどあって、参加者があかりんご隊メンバーといっしよに実験できる(写真右)ようになっている。
ちなみに白衣姿の人たちはあかりんご隊メンバー、および「白衣をきて科学者きぶんになってみよう!」企画(松崎がかってに命名)に参加している子供さんたちだ。


名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 科学実験
会場の平面図をものすごくおおざっぱに描くと、上のようなかんじ。


名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 科学実験 アルギン酸ナトリウム 塩化カルシウム
さて、各丸テーブルでは、どんな実験ができるのだろう。
松崎はさっそく突撃し、あかりんご隊メンバーさんに説明をうけつつ(子供にまじって)やってみた:

「この実験は、題して人工イクラをつくってみようです」
――じ、人工イクラ?
「このピンク色の液体がアルギン酸ナトリウムで、昆布などに含まれる多糖類です。あのぬるぬるねばねばのもとになっています。
マグネシウムイオンやカルシウムイオンと反応してゲル化する、というおもしろい性質があるんですよ。
だから……」
と、あかりんごメンバーさん、ピンクの液体(=アルギン酸ナトリウム)を水、および塩化カルシウム溶液のはいったカップに滴下する。

名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 科学実験 アルギン酸ナトリウム 塩化カルシウム
「水のばあいはすぐに拡散してしまうんですけれど、
塩化カルシウム溶液のなかでは、アルギン酸ナトリウムのまわりに膜ができて、しっかりした球状になるんです。
それがイクラそっくりだから、人工イクラ

名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 科学実験 アルギン酸ナトリウム 塩化カルシウム
――たべられるの?
「たべても体に害はないけれど、できればたべないでくださいね」

名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 科学実験 アルギン酸ナトリウム 塩化カルシウム
アルギン酸ナトリウム溶液はいろんな色が用意されていて、カラフルなイクラ(?)をつくることができる。
矢印のように、ラップにはさんで押してみたけれどつぶれない。実物ではとても考えられない、しっかりしたイクラができた。
楽しい

名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 科学実験 アルギン酸ナトリウム 塩化カルシウム
完成した人工イクラ。おみやげにもらえます。でもたべちゃだめ


名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 科学実験
そして、あかりんご隊メンバーによるステージでの公開実験。こちらもすごいひとだかりが。
やっていたのは「どうして? 出たり入ったりする風船のなぞ」(松崎がかってに命名):

名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 科学実験 ステージでくりひろげられる現象は、こんなかんじ。


名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 科学実験
たねあかしは、あかりんご隊手描きの説明図をみてください。

名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 科学実験
実験に使用された道具たち。

実験のあいまに、あかりんご隊メンバーさんたちにいろいろきいてみた:

――こういう実験の内容って、どんなふうに考えているんですか?
「もちネタ、じゃないですけど、いくつかレパートリーがあるんですよ。
子供さんたちにお見せしたり、いっしょにやったりするので
まんいち口にいれてしまっても危険のない材料を使うようにしなければいけません。
そうなると、おのずと種類がかぎられてきて。
今日やった『イクラ』と『水風船』は、すでに何度かやって好評だったものです」

――というと、公開実験っておもに子供さんたちを相手に?
「はい。名古屋大学内にある未就学児のための保育園と、小学生対象の学童保育所で。
そのほかにも、名古屋市科学館で行われる市民対象イベント『科学の祭典』でも行っていますよ」

――そうそう。あかりんご隊、っていう名前の由来を、おしえてもらえます?
「実は、この団体を発足させた理系女子学生ふたりの名前をそれぞれとってくっつけて、なんです」

――ええっ? あかりんご隊をつくったのって、学生さんなんですか?
「はい。発足は2007年なんですが、
学内少数派である理系女子学生があつまれるコミュニティをつくろう、というのが当初の目的でした。
二年目から時活動が拡張して、保育園・学童保育所やイベントへの出張、
さらには名古屋大学のオープンキャンパスでも、女子高生のための進学相談として出展するようになったんです」

あかりんご隊をバックアップする、名古屋大学男女共同参画室 助教の榊原千鶴先生にも、お話をうかがった:
――メンバーの募集は、どのようにされてます?
「基本は口コミです。また、リーフレットやホームページでも参加をよびかけています。
理系の女子学生や女性教員があつまれる、こんな楽しいコミュニティがありますよ、って。
それに、実をいいますと、今年になってからイベントなどの活動回数がふえてきて、人手がたりないんです」

――いまのメンバー数は?
「29名です」

――メンバーになることのメリットってなんですか?
「やはり、少数派の理系女子学生・教員どうしのネットワークができることですね。
自然科学系の研究室では、女性は自分ひとり、なんて状況はざらですから
こういう場は、必要とされていると思います。
それと実利的なことをいえば、
就職活動のとき、在学中にやっていたこととしてあかりんご隊について話すと
とても受けがいいようです」

――今後は、どんな活動を?
「直近のイベントとしては、11月13日(土)に名古屋大学で女子中高生理系進学推進セミナーが開かれますので
そちらに参加します。
理系に進学するかどうか悩んでいる中高生のみなさん、
ぜひ、あかりんご隊に会いにきてください。
みぢかなロールモデルがみつかるかもしれませんよ」


あかりんご隊メンバーによる公開実験、
事前に思い描いていたより、何倍もおもしろかった。
僭越ながら松崎には多少の知識があるので、
これからなにが起こって、どういう原理なのかはおおむねわかるのだけれども
それでも、実際に目の前でくりひろげられる実験にはどきどきした。
子供たちにとっては、きっと
「なにがおこるの?(謎)」→たねあかし→「そうだったんだ!(謎の解明)」
といったかんじで、映画をみているみたいに楽しめたと思う。いや、双方向のコミュニケーションがあるから、映画以上だ。

理系女子学生たちは忙しい。だから、できることは限られているかもしれないけれど
きっと、子供たちへの影響は大きい。
だいすきな理科の魅力を次世代に伝えるために、
ぜひぜひ、がんばってほしい。学業にむりのないように。



(2010年10月16日 名古屋大学 野依記念学術交流館にて)




2010/10/22 執筆