理系女子

「ぽにい」冒頭部分試し読み(『蛇足軒』第四話)

作成日:2017/09/20 最終更新日:2017/09/26 かいたひと:松崎有理

 るるるるるる。るるるるるるる。るるるるるるる。
 無人の部屋で電話が鳴る。
 るるるるるる。るるるるるるる。がちゃ。
 呼び出し音はついに切れて、機械音声が応答をはじめた。「ただいま留守にしております。ご用件をどうぞ」
「えええ、朝からすまんね」二度ほど、咳払い。老いた男の声はつづく。「ああ。シーノくん、いないのかい。ええ、こないだの話のつづきだよ、いい話。うん、あのね。ひょっとしたらきみに、ホラホラ属分類の研究職を紹介できるかもしれないんだ。えええ、それでね」
 ぴーーーーーーーー。
 録音可能時間は無情な電子音とともに終了した。
 室内はふたたび無音になった。ついさきほどまで暖房されていた空気がじょじょに冷えていく。
 窓の外では雪片が舞っている。北の街は真冬をむかえた。

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大先輩・郷 通子先生にインタビュー――理系女子応援企画・その4

作成日:2011/02/04 最終更新日:2017/11/07 かいたひと:松崎有理

*本稿は取材先の認可を得て執筆、掲載しています。

郷通子先生

郷 通子先生近影。情報・システム研究機構の理事室にて。とにかく気さくで話しやすいひとだ。松崎の緊張は二秒でどこかに消えた

「このひとは、”問うひと”だ」
というのが、今回のインタビューをつうじて松崎が郷先生に抱いた印象だ。

インタビューの日程がきまってから、郷先生の執筆したもので予習し、
実際にお会いしてお話をきき、
帰ってからまた復習して、
ますます、このひとは徹頭徹尾、疑問をもち問いつづけるひとなのだ、という思いを強くした。
しかもこのインタビュー、ものすごく楽しかった。二時間半があっというまだった。
以下で、当日の雰囲気をいくらかなりともお伝えできれば。


 郷 通子 Mitiko Go 先生 (理学博士、生物物理学) 略歴:
 1939年うまれ。
 1962年 お茶の水女子大学理学部物理学科卒業
 1967年 名古屋大学大学院理学研究科博士課程物理学専攻修了
 コーネル大学博士研究員、日本学術振興会奨励研究員、九州大学理学部非常勤講師を経て、
 1973年 九州大学理学部生物学科助手
 1989年 名古屋大学理学部教授
 1996年 名古屋大学大学院理学研究科教授、東京大学 分子細胞生物学研究所客員教授
 2003年 長浜バイオ大学バイオサイエンス学部学部長
 2005年 お茶の水女子大学学長、長浜バイオ大学特別客員教授
 現在 情報・システム研究機構 理事


「”なぜ?”と、きく子供だったんです」
幼少時代について質問した松崎にたいし、郷先生はこう答えた。

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名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊――理系女子応援企画・その3

作成日:2010/10/22 最終更新日:2017/11/07 かいたひと:松崎有理

*本稿は取材先の認可を得て執筆、掲載しています。

あかりんご隊1

「みんな、理科がだいすき! 理科の魅力をつたえていきたいと思っています」(名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊 リーフレットより 一部改変引用)

 

もくじ:
1、名古屋大学あかりんご隊のイベントを取材してみた
2、あかりんご隊メンバーへのインタビュー

ごあんない:
名古屋大学理系女子コミュニティ あかりんご隊
名古屋大学 男女共同参画室

1、名古屋大学あかりんご隊のイベントを取材してみた

「名古屋大学にも、女性研究者支援モデル育成事業としてあかりんご隊がありますよ」
と、東北大学サイエンス・エンジェルの取材時にうかがった。

あかりんご隊の存在じたいは、知っていた。
残念なことに、ウェブ上の情報があまりにすくなすぎる。せっかくおもしろそうなことをしているのに、もっと宣伝しなくちゃもったいない、というのが正直な感想。
しかし幸いなことに、名古屋市は、現在の松崎の居住地だ(註・執筆当時)。

これは、地の利をいかして取材してこなければなるまい。

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『学校教育におけるジェンダー・バイアスに関する研究』からわかったこと――理系女子応援企画・その2

作成日:2010/10/10 最終更新日:2017/11/07 かいたひと:松崎有理

東北大学サイエンス・エンジェル取材のなかで、
松崎が衝撃をうけた、いちまいのPPT:

パワーポイント説明

衝撃のパワーポイント。そんなあ。

……とても気になった。
理系進学って、保護者や教師にそんなにうけが悪いんだろうか?
しらべてみたところ、理系白書 この国を静かに支える人たち (講談社、2003年)でも、このデータが引用されている。
ここは、

「まずは一次資料にあたれ。話はそれからだ」 (スティーブン・ジェイ・グールド

の精神にのっとり、原典をみなければならないだろう。

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東北大学サイエンス・エンジェル――理系女子応援企画・その1

作成日:2010/09/23 最終更新日:2017/11/07 かいたひと:松崎有理

*本稿は取材先の認可を得て執筆、掲載しています。

サイエンスエンジェル・ロゴ

「おもしろそう! たのしそう! かっこいい! ――好奇心のタネ、とどけます」
(サイエンス・エンジェル リーフレットより 一部改変引用)

この記事のもくじ:
1、東北大学女性研究者育成支援推進室インタビュー
2、東北大学サイエンス・エンジェルのみなさんにインタビュー

ごあんない:
東北大学サイエンス・エンジェル 公式ホームページ
東北大学 女性研究者育成支援推進室

 

1、東北大学女性研究者育成支援推進室インタビュー

きっかけは、ぐうぜんだった。
松崎がウェブをみていて、母校のHPでたまたま発見した「東北大学サイエンス・エンジェル」 *)。
しらべてみると、自然科学系の女子大学院生があつまって、高校生や市民の前で実験イベントをやっているらしい。
……なんて楽しそう
在学中にこんな活動があったら、ぜったいに参加していた。なにより同性のともだちがほしかったし。切実に。

東北大学は、国内初の女子学生受け入れを行った大学なんだけど
それでも、理系の女の子は絶対数がすくなかった。昔も、いまも。

これは、応援せねばなるまい。

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