試し読みなど著作関連記事

本を出すときっていろんなことが起こるのです。そのこぼれ話、ボツネタ救済、新刊発売記念企画など。作品の試し読みプレゼントPDFのダウンロード(完全無料、お名前もメアドも不要)もこちらです。
「試し読みのもくじがほしいなあ」とお思いのかたは、お手数ですが「作品一覧」ページへ飛んでくださいませ。
サイト外掲載情報:
・『5まで数える』収録短編「やつはアル・クシガイだ――疑似科学バスターズ」は筑摩書房公式サイトにて全文試し読みができます。
・『小説すばる』(集英社)2017年6月号掲載の短編「惑星Xの憂鬱」が集英社公式サイトにて冒頭試し読みできます。

「ぽにい」冒頭部分試し読み(『蛇足軒』第四話)

作成日:2017/09/20 最終更新日:2017/09/26 かいたひと:松崎有理

 るるるるるる。るるるるるるる。るるるるるるる。
 無人の部屋で電話が鳴る。
 るるるるるる。るるるるるるる。がちゃ。
 呼び出し音はついに切れて、機械音声が応答をはじめた。「ただいま留守にしております。ご用件をどうぞ」
「えええ、朝からすまんね」二度ほど、咳払い。老いた男の声はつづく。「ああ。シーノくん、いないのかい。ええ、こないだの話のつづきだよ、いい話。うん、あのね。ひょっとしたらきみに、ホラホラ属分類の研究職を紹介できるかもしれないんだ。えええ、それでね」
 ぴーーーーーーーー。
 録音可能時間は無情な電子音とともに終了した。
 室内はふたたび無音になった。ついさきほどまで暖房されていた空気がじょじょに冷えていく。
 窓の外では雪片が舞っている。北の街は真冬をむかえた。

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「三秒の壁」冒頭部分試し読み(『蛇足軒』第三話)

作成日:2017/09/19 最終更新日:2017/09/25 かいたひと:松崎有理

 るるるるるる。るるるるるるる。るるるるるるる。
 出勤前のシーノは、たんすから出したばかりの外套を腕にかけたまま、はい、といって自室の電話の受話器をとった。ききおぼえのある声、いや忘れもしない声が響いてきた。
「シーノくんかい」
 そうだ、忘れもしない。忘れるわけがない、この男。

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「懇切、ていねい、秘密厳守」冒頭部分試し読み(『蛇足軒』第一話)

作成日:2017/09/18 最終更新日:2017/09/20 かいたひと:松崎有理

 二十七歳、女、無職。
 じぶんを冷静に評価分類するとシーノはため息がでてしまう。
 もちろん無職なんかじゃないといいはることもできる。じぶんはこの春、蛸足大学理学研究科生物分類学分野で博士号をとり、いまはそこで研究員をしているのだと。
 だが、と彼女はまたため息をつく。研究員とは名ばかりだ。だって無給なのだから。
 実質、無職と変わらない。
 ああ無職。いやなひびきだ。世間さまから石をなげられ、うしろ指を差されるにじゅうぶんな称号だ。きちんと職をもち納税しているひとたちからの架空の怒号がきこえる。社会のお荷物。無為徒食。ごくつぶし。税金泥棒。
 あああ。

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「裸の経済学者」冒頭部分試し読み(『代書屋ミクラ』収録)

作成日:2017/09/11 最終更新日:2017/09/18 かいたひと:松崎有理

あんぱんアイコン

 なんだ、これは。
 そのあんぱんをひとくちかじってぼくは驚愕した。
 あわててのこりを二分割し、右手に持った片方を目の高さより上にもちあげてみる。割った部分からのぞく小豆餡は、晩秋の午後の淡い日差しに透けてうすいむらさき色にみえた。
 はんぶんになったあんぱんをみつめて黙考する。究極、ということばがふと思い浮かんだ。究極の問い、究極の解法、そして究極の答え。究極の芸術品や究極の酒、究極の料理なんてものもあるだろう。
 もしもあんぱんの世界に究極が存在するのなら。

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「ぼくのおじさん」冒頭部分試し読み(『代書屋ミクラ』収録)

作成日:2017/09/11 最終更新日:2017/09/17 かいたひと:松崎有理

蛸アイコン

 特急に乗ったつもりがじつは急行だった、と気づいたのは、すでに旅程を半分もすぎたころだった。疲れのためか座席で熟睡していたので、じぶんの乗る列車がむやみにたくさんの駅で停車していることにまったく気づかなかった。

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「超現実な彼女」冒頭部分試し読み(『代書屋ミクラ』収録)

作成日:2017/09/03 最終更新日:2017/09/15 かいたひと:松崎有理

お花アイコン

「名前を教えてください」
 刻文丁通の花屋を三度めにおとずれた夜、店員の彼女に思いきってそうきいてみた。
 彼女はぼくが買った一本きりの赤いばらを包む手をとめて、目をあげた。白い丸顔が微笑する。小さな唇が動く。
「レニエです」
 それはこの店の名前だ。

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『架空論文』特設ページ

作成日:2017/07/25 最終更新日:2017/10/12 かいたひと:松崎有理

『鼻行類』か、それともソーカル事件か。
松崎有理が月刊電子文芸雑誌『アレ!』で2011~2012年に連載していた「架空論文」シリーズが、『架空論文投稿計画 あらゆる意味ででっちあげられた数章』(光文社)としてついに書籍化されます。
このページでは、発売に先立ってその内容を随時公開していきます。

【もくじ】
「架空論文」サンプル公開いたします。(PDFあり)(2017/07/25更新)
第一章をまるまる試し読み(2017/09/29更新)
新刊プレゼント企画はじめました。(2017/10/05更新)
書誌情報・カバー・帯・もくじ公開します。(2017/10/07更新)
どんな本なのかてっとりばやく知りたいかたへ(2017/10/12更新)

「架空論文」サンプル公開いたします。

こんな架空論文がほかに10本も入っています。でも、論文集ではなくて小説なんです。ラストにはおまけショートショートもついてますよ。

島弧西部古都市において特異的にみられる奇習“繰り返し「ぶぶ漬けいかがどす」ゲーム”は戦略的行動か? ——解析およびその意義の検証

ユーリー小松崎(比較民族文化研究所)、松崎有理(情報数理生命科学研究所)
(Received 7 Sep 2011, Final acceptance 12 Sep 2011)

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