作成日:2017/09/20 最終更新日:2017/09/26 かいたひと:松崎有理
るるるるるる。るるるるるるる。るるるるるるる。
無人の部屋で電話が鳴る。
るるるるるる。るるるるるるる。がちゃ。
呼び出し音はついに切れて、機械音声が応答をはじめた。「ただいま留守にしております。ご用件をどうぞ」
「えええ、朝からすまんね」二度ほど、咳払い。老いた男の声はつづく。「ああ。シーノくん、いないのかい。ええ、こないだの話のつづきだよ、いい話。うん、あのね。ひょっとしたらきみに、ホラホラ属分類の研究職を紹介できるかもしれないんだ。えええ、それでね」
ぴーーーーーーーー。
録音可能時間は無情な電子音とともに終了した。
室内はふたたび無音になった。ついさきほどまで暖房されていた空気がじょじょに冷えていく。
窓の外では雪片が舞っている。北の街は真冬をむかえた。