第2回創元SF短編賞レポート

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作成日:2011/08/09 最終更新日:2017/09/30 かいたひと:松崎有理

【もくじ】
1、第2回創元SF短編賞受賞者インタビュー
2、『結晶銀河』刊行記念 第2回創元SF短編賞贈呈式+トークイベント詳細レポート

第2回創元SF短編賞受賞者インタビュー

第2回創元SF短編賞第2回創元SF短編賞受賞者と関係者のみなさん。

東京創元社一階会議室にて、演者と受賞者全員集合。左手前から時計回りに:1、第二回創元SF短編賞佳作の空木春宵さん 2、東京創元社編集部の小浜徹也さん 3、ゲスト審査員の堀晃先生4・5、受賞者の酉島伝法さんとその奥さま 6、選考委員の日下三蔵先生 7、大森望先生。(以下、本文中では敬称略)

松崎の出身賞である創元SF短編賞もぶじ、第二回が終了。
さる2011年8月5日(金)19時より、ベルサール飯田橋において贈呈式、および年刊日本SF傑作選『結晶銀河』刊行記念トークイベントが行われた。
もちろん松崎はカメラを持って参加、今回も取材モード全開だ。
しかも、受賞者インタビューという新企画もひっさげて。

東京創元社会議室で受賞者おふたりと名刺交換。
まずは受賞者、酉島伝法(とりしま でんぽう)さん。
松崎「このたびはおめでとうございます。作品、よませていただきました」
酉島「恐縮です」
そして佳作の空木春宵(うつぎ しゅんしょう)さん。
松崎「このたびはおめでとうございます。作品はまだよんでません」
外野一同「あたりまえだろ」(*1)
と、きれいにボケツッコミがきまったところで、隣室にてインタビューがはじまった:


*1 なぜ「あたりまえ」なのかというと、創元SF短編賞正賞受賞者はいちはやく「年刊日本SF傑作選」に掲載されるため。佳作のひとはあとまわし。

第二回創元SF短編賞受賞 酉島伝法さんにインタビュー

――小説を書こうと思ったきっかけは。
「小学校四年生のときだったかな。ドリトル先生のパロディを書いたんですよ。それと江戸川乱歩も。やってみたら、たのしかった」
――ということは。子供のころから作家になりたかったのでしょうか。
「いいえ。最初は漫画家になりたかった。
作家にはなれるはずがないだろう、と子供心に思ったんです。それで、絵のほうへ進んで」
――しかし。絵のほうがさらにたいへんなのでは。
「はい。たいへんでした」
――尊敬する作家は。
多和田葉子さんです。執筆を本格的にはじめた二十代後半ごろからはまりました。
言葉の異化、が興味ぶかい」
――座右の書は。
「ピエール・マッコルラン『恋する潜水艦』。なんどもよみました」
――小説をかくときに気をつけていることってなんですか。
「状況を描く、描写をする、ということ」
――あなたにとって小説を書くってなんでしょう。
「書いていないと心の平穏が保てない。
でも、書くともっと心が乱れるんですけどね」
――筆暦は。
「十二年」
――投稿暦は。
「十一年」
――今回、創元SF短編賞に応募されましたが、長編と短編ではどちらがとくいですか。
「短編かな、とさいきん気づきました。これまでは主に長編を書いていたんですけど、無理をしていたみたいです」
――この賞をえらんだ理由は。
「ここしかない、と思ったから。ぼくの作風は大森望さんしか認めてくれないだろうと」
――この賞を知った媒体は。
「たぶんTwitter」
――応募に際しどのような準備をしましたか。具体的になにをしましたか。
「すきほうだいに書きました。
下読みがない、選考委員が直接、一次から読んでくれる、という特異なシステムが支えになった」
――受賞作を書きあげるにはどのくらいかかりましたか。
「半年です。
まず、絵を描くこと(*2) からはじめました」
――そうじゃないかと思っていました。
受賞までに書いた枚数を通算すると、どれくらいですか。
「長編を八本書いているので、五百かける八で四千枚くらい」
――受賞の連絡 がきたとき(*3)なにをしていましたか。
「ちょうど夕ご飯どきだったんです。
買ってきた牛丼のふたをあけたら、電話が鳴って」
――受賞のしらせをきいて、最初にいった言葉は。
「なんでしょう。おぼえてないなあ。
ありがとうございます、かな」
――今後の野望をおきかせください。
「まず、短編集をだす。
そして、消えないようにがんばる」
――これから創元SF短編賞をめざすかたがたにメッセージを。
たがをはずしましょう
――さて。ここからは踏み絵みたいな質問です。
SFを愛していますか。
「もちろん」(きっぱりと)

――SFとの出会いはいつ、どの作品ですか。
「小学一、二年のころに読んだ、SFこども図書館の『星からきた探偵』。
ハル・クレメント『20億の針』のジュブナイル版です」
――いちばんすきなSF小説は。
「一本だけか。むずかしいなあ。
それでは、神林長平『あなたの魂に安らぎあれ』を」

ここで東京創元社の若手編集者F嬢が入室。
「すみません。時間押してるんで、てばやくおねがいします」
いそいで空木さんのインタビューに移る。

第二回創元SF短編賞佳作 空木春宵さんにインタビュー

――小説を書こうと思ったきっかけは。
「書きはじめようと思ったのは遅いんですよ。高校生になってからでした。
江戸川乱歩『孤島の鬼』をよんだのがきっかけです」
――子供のころから作家になりたかったわけではないんですね。なにになりたかったんでしょう。
「警官です。いま考えるとふしぎでしょうがない。大人になってからは職務質問ばかりされてます」
――尊敬する作家は。
「江戸川乱歩、久生十蘭」
――座右の書は。
「『孤島の鬼』か、日下さんが編まれた『久生十蘭集』
――小説を書くときに気をつけていることってなんですか。
たばこを切らさないことです」
――あなたにとって小説を書くってなんでしょう。
「緊張しいで引っこみ思案な自分としては、自己表現の手段です。
それと自己顕示欲。
そして、気持ちいいからかな」
――筆暦は。
「九年」
――投稿暦は。
「二年」
――今回、創元SF短編賞に応募されましたが、長編と短編ではどちらがとくいですか。
「どっちもだめなんです。中編になってしまう」
――この賞をえらんだ理由は。
「日下三蔵さんが選考委員をやってらしたからです。
『怪奇探偵小説傑作選』『怪奇探偵小説名作選』にとても影響をうけました。
それから、自分の書くジャンル的に、ほかの賞には出せないなあ、と」
――この賞を知った媒体は。
「年刊傑作選の巻末です」
――応募に際しどのような準備をしましたか。具体的になにをしましたか。
たばこをきらさないようにしていました。
ほかには、もちろん古典文学研究とか、下調べには時間をかけました」
――受賞作を書きあげるにはどのくらいかかりましたか。
「構想から完成まで、半年です」
――受賞までに書いた枚数を通算すると、どれくらいですか。
「すくないんですよ。千枚いってないと思います」
――受賞の連絡がきたとき(*3)なにをしていましたか。
「ちょうどトイレにはいっていました」
――受賞のしらせをきいて、最初にいった言葉は。
「トイレからあわてて出たこともあり、そうですかさようですか、としか、とっさにはいえませんでした。
それから、ありがとうございます、と」
――今後の野望をおきかせください。
「自分の本を、だれかの本棚の片隅にひっそりと収めてもらうこと」
――これから創元SF短編賞をめざすかたがたにメッセージを。
体はだいじにしてください。ぼくも、応募作執筆中に体調をくずしました」
――それはとても重要なことです。作家は体が資本ですから。
さて。ここからは踏み絵質問です。SFを愛していますか。
「はい」
――SFとの出会いはいつ、どの作品ですか。
「手塚治虫『火の鳥 復活編』
――いちばんすきなSF小説は。
「『五色の舟』」

ずいぶん駆け足になってしまった。
時間押せ押せでインタビュー終了、つづいてイベント会場のベルサール飯田橋へ移動する。

ひきつづき、『結晶銀河』刊行記念 第2回創元SF短編賞贈呈式+トークイベント詳細レポートを、どうぞ。


*2 受賞作「皆勤の徒」には6枚のイラストがそえられている。
*3 第一回創元SF短編賞受賞のことば・みずからボツバージョン
( 「『ミステリーズ!』に載せますから、受賞のことばを200字以内でかいてください」 と、担当氏にたのまれてはじめに浮かんだのが、このバージョン。もちろん自分でボツにしましたが、受賞直後の興奮がよくあらわれていて、ある意味おもしろいかもしれません。捨ててしまうのももったいないので、ここに公開します)
5月10日午後10時。
こんな時間になっても連絡がない、ということはぜったいに落ちたな、と思いながら、わたしはなかばやけになって某長編囲碁漫画を読んでいました。
ヒカルくんはプロになったのにわたしはまだプロになれないんだなあ、とつぶやきつつ。
そんなとき、電話がなりました。
「東京創元社です。受賞、おめでとうございます」
「えええっ??」
ヒカルくん、わたしもプロになれたよ。(181字)
(なお、電話連絡が遅れたのは「このあとみんなでご飯食べにいっちゃった」からだそうで。上のエピソードを伝えたおかげで、翌年以降はこの賞の受賞者がきまったらすぐに電話するしきたりとなりました)

『結晶銀河』刊行記念 第2回創元SF短編賞贈呈式+トークイベント詳細レポート

第2回創元SF短編賞贈呈式の会場

イベント開始直前の会場風景。

さる2011年8月5日(金)19時より、ベルサール飯田橋において第2回創元SF短編賞贈呈式、および年刊日本SF傑作選『結晶銀河』刊行記念トークイベントが行われた。
以下、松崎による詳細レポートを(本文中では敬称略):

第2回創元SF短編賞贈呈式、正賞

正賞受賞者、酉島伝法さん。


さいしょは贈呈式。
東京創元社社長より酉島さんに賞状、および副賞(*4)が贈られる。
去年を思いだしてちょっと涙ぐむ松崎。
酉島さんより受賞のことば:
「今日この場に立てたことを光栄に思います。
小説を書いては落選する、というのが年中行事になって久しく、それがいつまでもつづくのだろうと思っておりました。
今回、タガをはずして好き放題に書けたのも、それをみなさまに読んでもらえるのも、創元SF短編賞という、ほかに類をみない、献身的な審査のある賞のおかげだと感謝しております。
ありがとうございました」

第2回創元SF短編賞贈呈式、佳作

佳作の空木春宵さん。


そして空木さんにも賞状が。
受賞のことば:
「このたびは創元SF短編賞佳作という栄誉ある賞を賜わり、
応援してくださったすべてのみなさま、選考委員の先生方に心からお礼申しあげます。
また、古典文学の楽しさを教えてくださった駒澤大学の松井健児教授、
そして、私生活の面をひごろからいちばん近くで支えてくれている婚約者にはとくに感謝しております。
本当にありがとうございます」

『結晶銀河』刊行記念トークイベント

演者四名が壇上にあがり、トークイベント開始。

先日逝去された日本SF界の巨匠、小松左京先生をしのぶ話題ではじまる。
大森「8/17に追悼イベントをやります。
大阪でも、同様の企画が進行中です。
9月のSF大会では、瀬名秀明さんが小松先生のノンフィクション作品についてパネルを持つことになりました」
そして、おなじ関西在住である堀晃先生がたのしい思い出話を披露してくださる。
堀「ぼくは小松先生の”生まれながらの弟子”なんです。
横田順彌さんは”唯一の公認弟子”なんだけど、ぼくは非公認ね。
デビュー前の小松先生にはじめての原稿をみていただいたことがじまんです。高校生のときでした」

『結晶銀河』の話題へ。

大森「今回は収録作についてはもめませんでしたね。ベストメンバーというかんじ。
ほんとは、みんな知らないような作品が多いほうがいいと思うんだけど、今年はべつ」
日下「大森さんから、”これってSFじゃないだろ”みたいなのがこれほどこなかったのははじめて
小浜「白井弓子先生の担当編集者に連絡したら、めちゃくちゃ喜んでいて。収録を狙っていたんだそうですよ。
そうそう、じつはこの収録にあたって加筆されてます。まんがと文庫は縦横比がちがうので。
それから長谷敏司くんの(「allo, toi toi」収録決定通知のときの)喜びようったら。
それとね、星雲賞をあてた(小川一水「アリスマ王の愛した魔物」)」
大森「じつは、今回のかくしテーマは”児童ポルノ規制法反対”」
小浜「巻末に短編賞受賞作をいれるのは日程的にきついんだけど、来年もやります」
大森「ぼくは、だいじょうぶです。一月のうち二週間をこのためにあててますから」
堀「二週間で、ぜんぶよむんだ」

このあとしばし、大森さんが原稿をよむスピードがいかに早いか、たいする日下さんがいかに遅いか、の話題で盛りあがる。

小浜「堀さんが”六十歳すぎのひとがかいた一代記、みたいなのはないんだね”っておっしゃってたんですが、答えとしては、投稿規定の手書き不可がネックになっているんじゃないかなと。
六十歳でデビューってありだと思いますけどね。そのあと十年がんばればいい」
大森「一次でかならず落とすのは、タイムスリップして江戸時代とか戦国時代にいくというやつ。ほんとに多い。そしてみんなだめ。
そして強く思ったのは、ふつうのSFってかくのがとてもむずかしい、ってこと」

『結晶銀河』刊行記念トークイベント

ここで受賞者ふたり登壇。


小浜「最初から、この二本にしぼられていましたよね」
大森「受賞作、よんだひとはどのくらいいますか。挙手して。
それじゃあ、とちゅうであきらめたひとは
小浜「応募時の五倍はよみやすくしてますよ」
日下「そうそう。(決定稿を)みておどろきました」
小浜「この作品の直しにはとにかくエネルギーをつかって。なんだか魂もっていかれた心持ちでした。
いちばんたいへんだったのは、この著者はいったいなにを書こうとしているのかわからないこと」
酉島「それを説明するのがたいへんでした」
大森「また小説に書いたらいいよ。作家と編集者の葛藤、みたいな」
小浜「大阪ではじめてお会いしたとき、”ああふつうのひとでよかった”と心から思いました
堀「大阪のひとだっていうので電話してみたら、行きつけのたこやき屋の話で盛りあがっちゃって。
後日、その店でいっしょに祝杯をあげたの」
大森「『棺詰工場のシーラカンス』は、ファンタジーノベル大賞の選考でよんでいたんです。これすごい、って押したかったんだけど、新潮のひとたちには理解してもらえなかった。”売れないからだめです”って。
いまかれらが求めているのは『しゃばけ』みたいなやつ。昔のファンノベのおもかげはありませんよ。
創元だって、小浜くんが難色をしめしてた」
小浜「せめてルビをつけてください、と」
大森「でも。女性編集者(=F嬢)が”あれをよみやすくするんですか。それって方向性がちがうでしょ”と怒ってたじゃない」
小浜「笛地静恵さんに傾向が近いかな、と思いましたね。それと『マトリックス』の世界観を連想した」
大森「資質としてSFに向いてるかな、と心配してたんだけど、こんどのはがっちりSFだよね。
しかし、ふつうのSFはかけないの」
酉島「いや、あれ、ふつうのSFですよ」(と関西イントネーションで)

小浜「それでは、空木くんの紹介を。
虫めづる姫君からはじまるうつくしい作品です」
大森「商品としては出しやすい。即戦力になりそうですね。
古典が専門なの」
空木「はい」
大森「SFは、勉強中か」
空木「はい」
大森「もっと自分からいろいろしゃべろうよ
それじゃあ、なぜこの賞に応募したの」
空木「ほかでは受け入れてもらえないかな、と」
小浜「ファンタジーノベル大賞の短編版みたいに思われているのかな。
でも、あれはりっぱなSFだよね」

『結晶銀河』トークイベント

大森望賞の片瀬二郎さん、堀晃賞の忍澤勉さんも登壇する。


小浜「片瀬さんは、すでにデビューされてますよね(1998年、ENIXエンターテインメントホラー大賞)」
片瀬「ホラーがすきなんです。書いているとどうしてもホラーになってしまう」
大森「日下さんが”これはSFじゃない”と」
堀「ぼくはSFだと思いますよ。『スカイライン』よりははるかにおもしろい」

小浜「そして、忍澤さん。『イワン・デニーソヴィッチの優雅な一日』で去年も最終に残ってます。
ぼくはすきだったけどな」
忍澤「でも、大森さんからこてんぱんにやられた」
小浜「筆暦はどのくらい」
忍澤「二、三年です。会社をやめて時間ができたので、十編ちょっと応募して、ここと、ほかでも賞をいただいて。歩留まりはよかったかな」
小浜「でも、みなさん。くれぐれも会社はやめないでくださいね
堀「短編らしい短編です。端正な文章できれいにまとまっています。
大人の小説です。たいへんいいと思いました」

小浜「それでは、去年の受賞者および『原色の想像力』著者のみなさんをご紹介」

松崎からはサプライズプレゼント。
ご来場のかた限定一名に、愛知名物・大あんまき詰め合わせを。
写真なしです。ごめんなさい。

『結晶銀河』トークイベント

左から、第一回創元SF短編賞佳作の高山羽根子さん、第一回創元SF短編賞山田正紀賞の宮内悠介さん、「人魚の海」執筆の笛地静恵さん。


高山「『ミステリーズ! vol.48』に新作短編がのったばかりです。それから『NOVA6』にも書きます。よろしくおねがいいたします」

宮内「『webミステリーズ!』に麻雀小説が、『NOVA5』に金融SFがのりました。ご一読いただければ」

笛地「年内に、商業誌に短編を書きます。年明けにも中編と短編の仕事が」

小浜「それでは最後に、演者のみなさんからひとことずつ」

堀「新人の作品はよんでいて刺激的ですね。
年刊傑作選よりは『原色の想像力』のほうがおもしろかったくらい」

日下「よむのが遅くなって申しわけありません。
地震の影響でおくれてしまいました」

大森「ぼくは、よむこと自体はたいへんたのしい。苦痛はまったくない。
ただ、封筒開けて原稿出して、という物理的作業がつらい。
わんこそばのお姉さんみたいなのがそばにいてくれるといいんだけど」

日下「でも、それだとよみおわらせてくれないよ

きれいに落ちたところで、おひらき。
ご来場くださったみなさま、ほんとうにありがとうございました。


*4 創元SF短編賞の副賞

創元SF短編賞の副賞

これが副賞の懐中時計だ!(とても重いので携帯にはむきません)

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松崎有理のデビュー作です。

『あがり』文庫版表紙と瀬名秀明さんによる帯
『あがり』

出版社 東京創元社
発売日 2013/10/31
文庫
定価 903円(税込)
解説 三村美衣

●デビュー作『あがり』が文庫になりました。
文庫版ボーナストラックとして短編「幸福の神を追う」(集英社『小説すばる』2012年7月号掲載「おらほさきてけさいん」改題)を収録しました。また、文庫化するにあたり各話とも手をいれました。
なお、オーディオ版もあります。朗読は兼高美雪さんです。
もくじと作品概要
1、「あがり」第1回創元SF短編賞受賞作。師の死を悼む男子学生の実験がとんでもない結末を引き起こします
2、「ぼくの手のなかでしずかに」小太り薄毛で研究もぱっとしないポスドク数学者が、とある自己実験をはじめたせいでどんどん変貌していきます
3、「代書屋ミクラの幸運」論文執筆代行業、ひとよんで「代書屋」。ここからシリーズ短編集と長編が派生しました
4、「不可能もなく裏切りもなく」中編。著者の持つバイオ知識をあらんかぎり注ぎこんだ本格ハードSFです。ここで描かれたすべての実験がじっさいに再現可能です
5、「幸福の神を追う」いわゆる異類婚姻譚。異類といってもすっごくかわいらしい、あれですよ
6、「へむ」医学部の地下にはりめぐらされた通路。そこには子どもにしかみえない妖怪たちがひっそり暮らしていました。少年と少女はかれらとなかよくなりましたが、ある日とつぜん地下道の閉鎖が決定します

第1回創元SF短編賞受賞作「あがり」単品で電子版が発売されています。
税込定価105円。特別付録として「選考経過ならびに選評」を収録しています。

松崎有理のほかの著作については、作品一覧ページをごらんください。

     

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