失業研究者たちが大暴れするコメディ映画『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』レビュー

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作成日:2018/06/04 最終更新日:2018/06/19 かいたひと:松崎有理

『いつだってやめられる 10人の怒れる教授たち』公式サイト

この映画をひとことでいうと、『オーシャンズ11』のイタリアンコメディバージョンです。特色は、メンバーたち全員が失業した研究者ってところ。研究者のポスト問題についてはこれまで拙作「代書屋」シリーズ『架空論文投稿計画』なんかでいろいろ描いてきたので、松崎としてはこの映画、どうしても注目しちゃうわけですよ。

じつは、この作品は三部作のうち二作め。松崎は知らずに見に行ってしまいました。だから第一作『いつだってやめられる 7人の危ない教授たち』は未見なのだけど、さいわい6/23 6/30(*)からヒューマントラストシネマ有楽町で上映されることが決定しました。鑑賞後、この記事にもいろいろ加筆しますね。

*ヒューマントラストシネマ有楽町公式サイトの記事より、上映開始日の情報を修正しました(2018/06/19)。

【もくじ】
1,作品の背景
2,メンバー紹介
3,ネタバレしないていどにあらすじ
4,みどころ(注意:若干のネタバレあり)
5,まとめ(みなさんへ、おすすめのことばなど)
6,ほかのひとによるレビュー

1,作品の背景

前作をみていないのであちこちから情報を拾い集めたうえで推測まで入っているんだけど、だいたいこんなかんじ。
主人公で神経生物学者のピエトロは、予算削減のあおりをくらって大学での職を失う。このままでは恋人と約束した食洗機も買えない。そこで金策の手段として、自身の知識を活かして合法ドラッグを製造することを思いつき、おなじように失職した研究者たちを集めてチームをつくる。いろいろあって、さいごはみんなの罪をすべてかぶって彼ひとりが刑務所に収監される。彼の恋人は妊娠している。

2,メンバー紹介

  • 神経生物学者ピエトロ 主人公。恋人がいるがいつもいいわけばかりしている。いかにもイタリア人男性らしく服がおしゃれ
  • 化学者アルベルト なんでも分析してくれる。かなり体重超過。ドラッグ中毒でリハビリちゅう、娼婦と毛皮と高級車もだいすき、といちばんキャラが立ってる
  • マクロ経済学者バルトロメオ 数学に強い金勘定係。ラクダと暮らしていてあまり幸せそうでない
  • 考古学者アルトゥーロ 文系フィールドワーカーその1。だからいつも服装が調査着っぽい。ローマの過去とかすっごいくわしい。考古学科のワゴン車を移動手段として調達するあたりが地味にリアル
  • 文化人類学者アンドレア 文系フィールドワーカーその2。人類学者らしく装いや話術でどこへでも溶けこみ、だれとでもうちとけられる。ある意味最強
  • 記号学者マッティアと碑銘学者ジョルジョ 古典研究者コンビ。ときどきラテン語で会話している天然学者系。いろんな意味でみていてはらはらするふたり組
  • 解剖学者ジュリオ アクション担当。人体の構造を知りつくしているのが強み
  • 工学者ルーチョ いろんな装備や武器をつくってくれるべんりなひと。むだにイケメン
  • 教会法学者ヴィットリオ 法律家としてチームをバックアップ、でも専門は教会法。なお彼だけ犯罪歴がない

3,ネタバレしないていどにあらすじ

前作で全員の罪をかぶって刑務所に入ったリーダーのピエトロ。妊娠した恋人には面会のたびいいわけばかり。あるとき彼は女性警部パオラ・コレッティと取引し、彼と仲間たちの罪を帳消しにするかわり合法ドラッグ30種を摘発することになった。ピエトロは仲間たちを再結集し、さらに「海外流出した頭脳」であるところのジュリオとルーチョも新規メンバーとして、30種のドラッグをつぎつぎ摘発。だがもっとも流通量の多い「ソポックス」というドラッグが摘発から漏れていた。かれらはこれも追うことになる。そうこうするうちピエトロの恋人の出産が迫る。はたして彼はソポックスをみつけてぶじ出所し、赤ちゃんの顔をみることができるのか。

4,みどころ(注意:若干のネタバレあり)

  • とにかく10人の研究者たちが個性的。10人ってチームものとしては多いほうなんだけどまず混乱しません。松崎のいちおしはやっぱりラテン語コンビ。ほんと目が離せない。
  • ストーリー展開は王道です。ブレイク・スナイダーさんが著書『10のストーリー・タイプから学ぶ脚本術』で分類するところの「強盗羊毛」タイプ(つまり『オーシャンズ11』ね)。お手本みたいなプロットなのでシナリオ執筆に興味のあるひとは鑑賞後に自分でプロットを起こしてみるとよいと思います。
  • メインキャラクタが研究者ということで地味な内容かと予想してましたが、ハリウッドばりのアクションシーンも楽しめます。しかもちゃんとこの作品らしくアレンジされているのが好印象。アクションなんだけどコメディで、ばっちり笑えます。ちいさめの劇場でみるとみんなでいっしょに笑えて一体感も味わえてお得です。二時間ちかい尺だけどあっというまでした。
  • ひとつだけ難を挙げれば、ガスクロHPLCかも)がチープすぎ。あまりに安っぽいのでわたあめ製造機かと思ったくらい。それと、精密機械をトラックの荷台にむきだしで積んじゃうのも無茶すぎ。あれをガスクロと観客に気づかせないことが叙述トリックみたいな役割をはたしているのではと解釈しましたよ。

5,まとめ(みなさんへ、おすすめのことばなど)

  • 研究者のみなさんへ。「失業研究者の映画なんて暗い気分になりそうだからみたくない」というのは即断にすぎます。だいじょうぶ、あれほど恐ろしいことはけっしてあなたには起こりません。鑑賞後はきっと「自分はまだ幸せだ」と胸をなで下ろすことになるでしょう。
  • 研究者以外のみなさんへ。本作は学者ものですが、小難しいところはとくにありません。娯楽映画として気楽にたのしむことができます。エログロシーンもないのでデートでも、お子さま連れでもだいじょうぶですよ。

6,ほかのひとによるレビュー

イタリア悲喜劇映画『いつだってやめられる』がやめられない!|シドニー・シビリア監督インタビュー
レビューというか監督へのインタビュー。執筆者さんも現役研究者なので思い入れが詰まっている良記事です。

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松崎有理はプロ小説家です。
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作品一覧

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嘘の論文、いっぱい書いてみました。


『架空論文投稿計画 あらゆる意味ででっちあげられた数章』
出版社 光文社
発売日 2017/10/20
単行本、四六判
定価 1600円(税別)
デザインと装丁 宗利淳一
第一章と「ぶぶ漬け」論文まるごと試し読み
●七冊目の単行本は破天荒な変化球。まるで『鼻行類』のようにリアルでおかしな嘘論文が11本も入っています。でも、論文集ではなく小説です。これらのへんな論文は、ひとりの勇気ある研究者が研究不正の実態をあばくため計画した「架空論文投稿実験」用にわざと嘘っぽく書いたものなのです。たとえばそのタイトルは、
「島弧西部古都市において特異的にみられる奇習“繰り返し『ぶぶ漬けいかがどす』ゲーム”は戦略的行動か?」
「経済学者は猫よりも合理的なのか?」
「図書館所蔵の推理小説に“犯人こいつ”と書きこむひとはどんなひとか」
「おやじギャグの社会行動学的意義・その数理解析」
「比較生物学から導かれる無毛と長寿との関係――はげは長生き?」
などなど。タイトルからしておかしいのに、投稿された論文にだれもダメだししてくれません。そんな実験を続けるうち、研究者に妨害の魔の手が。謎の組織・論文警察やその黒幕の正体は。そして主人公に接近する黒衣の超美人ハーフ研究者は敵か味方か。「代書屋」シリーズでおなじみ、敏腕代筆業者のトキトーさんも登場します。
学術業界(架空)裏話にひたっていただくため、専門用語にはていねいに註をつけました。巻末にはショートショートのおまけつき。コスパには自信があります。するめを噛むように味わっていただけたら幸いです。
●もくじ、帯ほかくわしい情報は当サイト内架空論文特設ページよりごらんになれます。

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