第3回創元SF短編賞受賞者インタビュー・オキシタケヒコ編



さて正賞・理山貞二さん編につづき、優秀賞のオキシタケヒコさん編を、どうぞ。

第3回創元SF短編賞受賞者インタビュー

第3回創元SF短編賞優秀賞受賞者、オキシタケヒコさん近影。
「ウェブにのっけるので写真を」といわれてこれを送ってきたそのセンスに脱帽


――まずはご自身のことを。徳島県出身だそうですが、そういえばことしの“徳島すだち投げ祭り”の映像はすばらしかったですね。もうすだちの香りが画面をとおしてしみこんでくるかのような迫力で。
そうだ地域限定“徳島鳴門わかめダブルミックスソフト”もたべてみたい。あれってやっぱり徳島県民のソウルフードなんでしょうか。

オキシ「そうそう毎日食うてましてな……ってちゃうわ! いきなりボケでくるかー。
ないないない。ないですないですそんな奇祭も珍菓も。
いや待て、ワカメ味のソフトクリームは存在するのか。否定するのも難しい微妙なネタでくるなぁ」

――お手本みたいなノリツッコミありがとうございます。

オキシ「えーと、まずは説明と釘刺しが必要ですね。
前作「What We Want」の発表以来、松崎さんとはHALCON等のイベント(*)ですでに何度かお会いしているのですが、その中で「よし、この人はボケても許してくれるはずだ」と認識されたのか、容赦なくボケ倒してくるのです。受けてツッコミを返すのは使命なのですが(&楽しいのですが)、さすがにインタビューでは自重いたしたいところです。いいですか松崎さん(ジロリ)」


HALCON 『原色の想像力』の部屋

(*註:イベント写真の例。HALCON2012「『原色の想像力』の部屋」スピーカー集合。
左より選考委員の日下三蔵さん、担当氏こと東京創元社編集部の小浜徹也さん、第一回佳作受賞の高山羽根子さん、
第一回山田正紀賞の宮内悠介さん、『原色の想像力』掲載の端江田仗さん、そしてオキシさん)

――そんな自重だなんてゆるしませんよ。作家は今後みずからをキャラ立てしていかないと売れないんですから。
それにせっかくみつけたツッコミキャラなんだからつかいたおさねば。担当氏はツッコミなんだと思ってたのに、じつは天然ボケキャラだと判明しちゃったところだし。
ああそれと。必要におうじてエイリアス(*)の沖下圭子さんを召還してくださいね。ではよろしくどうぞ。

(*註:エイリアス=作家の影武者、身代わり。エイリアス設定のルーツは村上春樹先生の「はるきちくん」。なお松崎のエイリアスはユーリー小松崎。第二回正賞受賞者・酉島伝法さんのエイリアスは西島伝法、端江田仗さんはジョニーはしえだ、とじりじり増殖中

理山「私もなんか名乗らにゃならんの? 狸山不逞とか?」

――あ。乱入ありがとうございます理山さん。でも“狸山不逞”はいまいちなので、『原色の想像力3』がでるときまでにおしゃれなやつ考えておいてくださいね。宿題ですよ。

オキシ「なんか自分の番が終わったとたんに豹変するなぁ理山さん(笑)
えーとなんでしたっけ。ああそうそう、生まれは徳島で、今は大阪在住です。もう人生の半分以上を大阪の北の方で暮らしています。ゲームの企画や脚本が本業なのですが、現在そっち方面は仕事がなく開店休業状態なので、他に色々ちまちまやって食っています」

理山「オキシさんの作品を読んだとき『あ、この人は私と同じ、大阪の北に住んでる人だな』と直感したのです(ドヤ顔)」

オキシ「いやいや直感も何も、そのまま作中に『北の方』て書きましたがな(笑)」

――たぶん理山さん1ページめでわかったのですよ。
では。小説を書こうと思ったきっかけは。

オキシ「私、『これはSFじゃない』とか言っちゃうタイプのSFファンなのですが、ある時、自分の完全オリジナル企画&脚本でプロジェクトを進める機会を得て、よし、では自分の好きなSFのゲームを気合い入れて作ってみようか、となったんですね。
ところが、進めていくうちにどんどん不安が膨らんでくる。自分がかつて連発していた言葉がブーメランで返ってくるわけです。『これは本当にSFなのか』と問うごとに自信を削られ、追い詰められながら作りました。商業的にも惨敗で、それまでにかなり体を壊していたこともあって会社を辞め、その後半年ぐらいは貯金を食いつぶしながら鬱々悶々としてたと思います。
そんな中、その作品を好いてくださる方々がブログや掲示板に書き込まれた感想やレビューを目にして、励まされ、もう一度創作でSFに挑戦してみようと決めました。そして自分一人でできそうなことを検討すると、小説が残りました。同じそのゲームを小川一水先生がブログで褒めてくださったことが最後のひと押しになりました。できるはずだ、と自分に言い聞かせつつ、今に至ります。しかしその、同じブーメランアタックが今回もしっかり眉間に直撃してるので、あまり成長してないなぁとも思います」

――尊敬する作家は。

オキシ「多すぎて挙げられません。自分には絶対にできないものを作り出せる方々は、おしなべて尊敬に値すると思っています」

――座右の書は。

オキシ「諸星大二郎『無面目・太公望伝』」

――小説をかくときに気をつけていることってなんですか。

オキシ「読み進めるための駆動力をどう読み手に与えるか、ですね。波に乗せるというか何というか」

――あなたにとって小説を書くってなんでしょう。

オキシ「誰かの頭の中と間接的に繋がる手段、でしょうか。これは小説に限らず、どんな創作でも同じだと思っています」

――筆暦は。

オキシ「小説だけに限るなら3年。ゲームシナリオも含めるのなら13〜4年ぐらいです」

――投稿暦は。

オキシ「創元SF短編賞に3回だけなので、同じく3年です」

――今回、創元SF短編賞に応募されましたが、長編と短編ではどちらがとくいですか。

オキシ「正直、まだわかりません。長編向きじゃないかと言われたりもしますし書いてもみたいのですが、短編であんなに大変なのにいわんや長編をや、という思いもあります」

――この賞をえらんだ理由は。

オキシ「書こうと思い立って色々練習してたその時期に、ちょうど第1回の告知を目にしまして。では行くか、と」

――この賞を知った媒体は。

オキシ「たしか『超弦領域』の巻末告知だったと思います」

――応募に際しどのような準備をしましたか。具体的になにをしましたか。

オキシ「まずは『食って寝る以外は全部書くことに使う』という日を最低2週間は確保するためにスケジュール調整。その後、習作をざっと書いてみて各要素をチェックしてから、メインとなるシチュエーションに至るまでの過程を逆算して図面を引き直す、ということを何回か繰り返しました。大変でした」

――受賞作を書きあげるにはどのくらいかかりましたか。

オキシ「設計から清書まで含めて3週間ぐらいです。しかしアイデア自体は3年ほど前から暖めていたものなので、それも含めるとえらく長期間になります」

――受賞の連絡がきたときなにをしていましたか

オキシ「そのときはですね……って松崎さん選考会場にいたから知ってるでしょ! 私もいましたってば!」

――すみません。“オキシさーんHALCON会場でいっしょに選考会みよーぜー”とお誘いしたのはそもそも松崎でございます。おなじように端江田仗さんも誘ってしまいました。おふたりには悪いことをした、とちょっとだけ反省してます。だけどね、ふたりともぜったいいい線までいくだろうと確信してたからこそ声かけたのですよ。
さて。
会場で受賞がきまって、最初にいった言葉は。

オキシ「精神的な疲れが大きくてまったく覚えてません。応募者が選考過程を生で聞くっていうのは、かなり心臓に悪いですね(汗)」

――あははーごめんなさい。ちょっとだけ反省してますよちょっとだけ。でも結果よければすべてよしで、よかったじゃないですか。
では、今後の野望をおきかせください。

オキシ「まずは筆力をもっと鍛えることが前提ですが、とあるジュブナイル長編をいつか書きたいと思ってます」

――これから創元SF短編賞をめざすかたがたにメッセージを。

オキシ「まず、読んでもらうことが一番大切です。書いたら誰かをとっつかまえて読ませましょう。叩かれたらむしろ感謝しましょう

理山「で、オキシさんは誰に読んでもらったかすごく気になるんですが。俺は家内に読んでもらえなかったんだよ! だから担当さんに(以下略)」

オキシ「あー、えーと、妻です(汗)。せっかく身近にいるんだから、読んでもらえるように奥さんにはSF者になってもらわなきゃだめですよ理山さん」

――そうそう。つれあいにはさいしょの読者となってもらえるよう、つねひごろから根回ししとく、というのは創作者の基本でございます。
いずれにせよ、耳に痛いことをいってくれるひとは貴重です。だいじにしましょう。
さて。ここからは踏み絵みたいな質問です。
SFを愛していますか。

オキシ「はい」

――SFとの出会いはいつ、どの作品ですか。

オキシ「中学一年ぐらいかなぁ。記憶が定かではないのですが、たぶんアシモフ『宇宙の小石』か、セイバーヘーゲン『バーサーカー 赤方偏移の仮面』あたりかと」

――いちばんすきなSF小説は。

オキシ「ひとつだけ選ぶって実に難しいんですけど……飛浩隆「"呪界"のほとり」は理想型のひとつとして常に頭の中にあります。今回、飛先生がゲスト審査員だと知って大喜びしたんですよほんと」

――第四回のゲスト審査委員は芥川賞作家の円城塔さんですからね。「道化師の蝶」が理想型だ、と思われるそこのあなた。あるいはたんに円城ファンのあなた。どうかふるってご応募を。ねえほしいでしょ円城塔賞。
ではオキシさん、そして理山さん、おつかれさまでした。

理山「よく考えたら、3つともぜんぜん踏み絵じゃなかったなあ」

オキシ「ですよねぇ」

――えっそうですか。“SFを愛していますか”なんて質問、もろに踏み絵だと思ったんですが。
ああそうかこうきかれて“だいきらいです”って答えるひともいないかな。いや、今後そういう猛者がでてくるかもしれないのでとうぶんつづけます。

来年もやりますよー。



第3回創元SF短編賞受賞者インタビュー・理山貞二さん編にもどりますよ。


おまけ。
「ウェブにのっけるので写真を」という松崎のおねがいにたいし、おふたりとも複数枚画像をおくってくれたので、
インタビュー冒頭にあげたもの以外も公開:

第3回創元SF短編賞受賞者インタビュー

まずは理山さん。
家族まんがで自分を表すときに使っているキャラクタです。
名前は猫父(ねこちち)」
なんですか家族まんがって。そっちのほうが気になってたまらない。



第3回創元SF短編賞受賞者インタビュー

つづいてオキシさん。
「なんかSFではなく暗い純文学書きそうです」
そう卓上の缶チューハイとかね。小道具きいてます。

2012/07/26 公開