理系女子応援企画・その3――『学校教育におけるジェンダー・バイアスに関する研究』



サイエンス・エンジェル取材のなかで、
松崎が衝撃をうけた、いちまいのPPT:

学校教育におけるジェンダー・バイアスに関する研究


……とても気になった。
理系進学って、保護者や教師にそんなにうけが悪いんだろうか?
しらべてみたところ、『理系白書 この国を静かに支える人たち』 (講談社、2003年)でも、このデータが引用されている。
ここは、

「まずは一次資料にあたれ。話はそれからだ」 (スティーブン・ジェイ・グールド)

の精神にのっとり、原典をみなければならないだろう。


正式な資料名は:

『学校教育におけるジェンダー・バイアスに関する研究 理科教育・学習におけるジェンダー・バイアス』
 科学研究費補助基礎研究 (2)(B) 研究成果報告書 平成 11 年度〜平成 13 年度
 研究代表者 村松泰子 (東京学芸大学) *)

だ、ということが判明した。
所蔵は、埼玉県にある女性教育情報センター

さっそく、松崎の地元の図書館をつうじて借り出す。


学校教育におけるジェンダー・バイアスに関する研究

きた。

通読してみる。

どんな研究なのかというと、タイトルどおり
理科という科目にみられるジェンダー・バイアスの有無と、その形成過程をあきらかにするのが目的。
平成11年と12年に、アンケート調査が行われた。

平成11年の調査対象は中学一年生。全国の公立中学校9校から961名を抽出。うち男子470名、女子437名。
方法は、学級単位の集団自記式質問紙調査。
平成12年は、一年たっての変化を知るため、前年と同じ学校の二年生を対象に、同じ方法で調査した。

さて、上の円グラフ。
もとデータにより、棒グラフ **) のかたちで描き直したのが、下図だ:


学校教育におけるジェンダー・バイアスに関する研究

両親の態度について、中学二年生の意識。平成12年調査より。
科学技術の仕事=エンジニア、技術職、コンピュータ技師、土木建築、医師、薬剤師、理科・数学教師と定義。


学校教育におけるジェンダー・バイアスに関する研究

教師の態度について、中学二年生の意識。平成12年調査より。


この研究の目的は、上に書いたとおりジェンダー・バイアスをみつけることなので
報告書では、男女差があるかどうかについてのみ、議論されている。

そこで。松崎が気になっていた:

 両親は子供が理系の仕事につくことをあんまり喜んでいないし、
 教師も生徒たちが理科でいい成績をとることをあんまり期待していない


ようにみえる、ことについて、こちらでかってに検討してみた。
もとデータをあたってみての結論:

 他の職種や教科との比較データがないから、なんともいえない

ひょっとしたら、

 両親はわたしが金融関係の仕事についたら喜ぶ とてもあてはまる=2%

なんてことかもしれないし、

 先生はわたしが社会科でよい成績をとれると期待している とてもあてはまる=1%

なのかもしれない。
だから、この調査結果だけで、理系進学が保護者や教師に人気がないのかどうか判断することはできない。



*) じつは、この研究結果は:
『理科離れしているのは誰か―全国中学生調査のジェンダー分析 』(村松泰子編、日本評論社、2004年)
として、書籍のかたちで出版もされている。
こちらのほうが入手ははるかにやさしいだろう。

**) 棒グラフと円グラフ
新聞雑誌やウェブではよく目にする円グラフだけど、 科学論文では、まず使われることはない。
ほんらい一次元(=線の長さ)で表現できる量を、二次元(=面積)で表現することで
よけいな情報をふやし、みる者を混乱させてしまうから。
じつは松崎も、この記事ではじめて円グラフというものを描いた。
でもこれ、できあがりがきれいで楽しいよね。きっとこの楽しさが、ちまたの円グラフ氾濫の原因じゃないかと思う。




2010/10/10 執筆

『学校教育におけるジェンダー・バイアスに関する研究』 続きがあります。