マキャモン『スティンガー』のレビューを天才、いや転載――『ずんだ文学 第三号』より



このたび、インタビュー企画やら掌編競作企画やらでいろいろとコラボした『ずんだ文学 第三号』
じつは松崎、むりをいってお願いして
かれらに何冊かの本について、レビューをしてもらった。
みんなとてもよく書けていたけど、
そのうちのひとつ、マキャモン『スティンガー』があまりにも傑作だったので
筆者の どはつてん さんに許可をいただき、ここに転載することにします。
『スティンガー』既読のかたは、きっと猛烈に笑えます。
未読のかたは、ぜひ読み終えてから、このページをみてください。

本文は、htmlにするにあたって改行を入れたていどで、ほぼ原文どおり。
ただ、松崎が読んで爆笑した部分は、ボールドタグで強調してあります。



『スティンガー』 ロバート・R・マキャモン レビュー  どはつてん (ずんだ文学の会)

ロサンゼルスの空港の中にウルトラ・スシ・メニュー(なんだそれは)を頼めるバーがあったのだけれど、
このたび一番高いスパイシー・ツナ・ロールを注文してみたら、出てきたのは八つ切りの真っ赤な鉄火巻きでした。9$半です。……
恐る恐る食べてみると、(マグロの赤身)ー(脂)+(唐辛子)=……辛子明太子(!)
という奇跡(初見なのに食べられる)が味わえました。美味しかったです。そんな国で生まれた本書をこのたびご紹介。

エンターテイメントとしての純度が非常に高い(バカ)SF、『スティンガー』です。
ディティールの詰め方に非常に問題のある作品です、が、実際銘打ってあるのもホラー・サスペンスということなので、
とにかくシーンに勢いさえあれば、細かいことは問題ないのでしょう。

スティンガーという宇宙人が、アメリカのある寂れた村に現れて、宇宙船が作るすごいバリヤー(触れると爆発する)で村全体を包囲したあと、村人を殺しまくる、という趣旨の本書。
この小説の非常に素晴らしい点は、超絶科学を持った宇宙人なのに、スティンガーが自力で(一応本体ではないけれど……)地面から穴を掘って現れ、人を引き込んで殺したり連れ去ったりするところ。それが天丼です。
その宇宙から持ち込んだ科学力を活用すれば他にいくらでもやりようがあるだろう……という気が若干しつつも、
SF的小説(での思弁小説的な部分)の方向性を軽々と放り捨てた潔さに、感服せざるを得ません。

村人VS宇宙人という構図の中、人々はどうにか、車とかダイナマイトとか、身の回りのアメリカンな道具 *) で宇宙人と戦います。
ハリウッドテイストを目指して失敗に終わった作品にありがちなB級臭がたまらないという人は、このあたりの展開でにやにやできるはず。
恐らくラストの戦闘シーンでのタバコのくだりでは、作者の類い希なるセンスに脱帽すること間違いなしです。

酢飯とアボガドをマッチングさせて寿司の新時代を世に築いてしまうような、後先考慮しない颯爽とした発想力が、この作品からはぷんぷん匂ってきます。
ホラー小説・キャラクター小説としても、非常によくできている。グロ描写の扱いは肝を押さえていますし、ストーリー全体的にもティピカルな登場人物を上手く働かせて、大団円に導いています。

圧倒的な低予算臭が好きな人は、ぜひ一読を。

*) ここ、三倍くらいボールドタグつけたい。無意味だけど。