SFファン交流会1月例会「2011年SF回顧(国内編)・『原色の想像力2』」詳細レポート



2012年1月21日(土)午後2時より、笹塚区民会館にて
SFファン交流会1月例会が行われた。

前回の12月例会にひきつづき、1月例会にも参加することにした松崎。
3月刊行予定の創元SF短編賞アンソロジー『原色の想像力2』の話が後半のメインなのだから、
第一回受賞者としてはぜひとも顔を出さねば、とかってに思いこんだゆえ。
さらにかってに、今回はプレス担当を宣言。
(以下、記事中では基本的に敬称略です)

しかし。
この日、松崎はファン交開始前に東京創元社の若手ミステリ編集者・薙刀F嬢とうちあわせをする予定を入れていたのだが:

  どういうわけか待ちあわせ時間を一時間まちがえる
 →おおはばに遅れることがわかったので、F嬢にメールをいれてから急いででかける
 →せめてものおわびに、とデパ地下にとびこんで輸入瓶ビールを数本買う
 →だがあわてていたので乗り換え駅で落としてすべて割る
 →失意のあまりまちがえて準急に乗り、笹塚をむなしく通過
 →もういちど鈍行でもどる
 →笹塚駅着、すこしでも遅れをとりもどそうとタクシーを、と思ったら目の前でべつのひとにさらわれる。しかたなくつめたい雨のなか徒歩で移動

というまれにみる大ポカをセットでやってのけた。ここまでひどいの人生はじめてかもしれない。
おかげで会場には2時半ちかくになってようやくたどりつくはめに。
ああプレス担当なのに30分ぶんもきけないって最低、だめじぶん、と思いきや。


SFファン交流会1月例会「2011年SF回顧(国内編)・『原色の想像力2』」

SFの神(なにそれ)は松崎をみはなしてはいなかった。
なんと、会はまだはじまってない。

とりいそぎF嬢にひらあやまりにあやまってから、カメラを持って最前列ちかくの笛地静恵さん、忍澤勉さんのとなりに座る。
室内はそうとう混雑。50人をこえていたらしい。大盛況です。

ustream生中継も準備完了、本番開始。

だがそのまえに。
『原色』のひとたち出てきてよ紹介するから、と大森さんがいってくれた。
その時点で会場にきていた創元SF短編賞関係者がぞくぞくと前へ。


SFファン交流会1月例会「2011年SF回顧(国内編)・『原色の想像力2』」

この日大阪からきてくれた第二回創元SF短編賞正賞受賞者・酉島伝法さんは、受賞後第一作となる「洞(うつお)の街」について、自作イラストを駆使してプレゼン。
舞台となる街のようすや、オチのぶぶんまで。それいいのかな。
酉島「今回の話は、落ちものです。宮内悠介さんの新作短編「ヨハネスブルクの天使たち」(SFマガジン2012年2月号収録)につづいて。
落ちものアンソロジーなんてどうでしょう」
だそう。そのときは松崎もぜひまぜてほしい。
なによりすばらしかったのが、登場キャラクタ「ももんじ」羊毛フェルトぬいぐるみ。白矢印のやつです。そのうち伝法さんの公式ブログで画像が公開されますのでおたのしみに。そりゃあもうかわいらしいんだってば。


SFファン交流会1月例会「2011年SF回顧(国内編)・『原色の想像力2』」

そして。「ものみな憩える」で第二回創元SF短編賞堀晃賞を受賞した忍澤勉さん。
大森「忍澤さんはこれと、第七回日本SF評論賞選考委員特別賞を受賞してます」
すみません。伝法さん、忍澤さんのつぎに松崎がよばれてしまったので、このあとによばれたみなさんの写真は、なしです。どうぞ二次会写真でごらんください。
しかもこの間メモもとれなかったので記憶にもとづいて以下、再構成。

松崎は電子総合文芸誌『アレ!』での架空論文連載についてすこし宣伝。
大森「9月号の小松左京特集で「ぶぶ漬け」を書いたかと思えば、次号に小浜徹也との対談がのり。そのつぎの号でもう連載がはじまり。
どうして松崎が『アレ!』にあんなに気に入られているのかわかんないよね」
松崎じしんもよくわからない。

伝法さんといっしょに大阪から参戦したのはオキシタケヒコさん。第二回創元SF短編賞最終選考に残った「What We Want」で『原色2』に掲載予定。
大森「大阪弁のたのしい作品です」

さいごに、第一回創元SF短編賞山田正紀賞・宮内悠介さん。SFマガジン2月号に新作短編「ヨハネスブルクの天使たち」を発表したばかり。
宮内「はじめての単行本『盤上の夜』がでます。3月刊行予定です。それと、『NOVA7』に新作短編が載る予定です」
とにかく驚異的な発表スピード。大森さんいわく「2011年でもっともたくさん短編をかいたSF作家」なのだそう。


SFファン交流会1月例会「2011年SF回顧(国内編)・『原色の想像力2』」

『原色』のひとたち、が席にもどって、ついに会がはじまる。
まずは前半。森下一仁氏(左)、大森望氏(まんなか)、日下三蔵氏(右)による「2011年SF回顧(国内編)」から。
会の後半は、東京創元社の小浜徹也氏を加えて『原色の想像力2 第二回創元SF短編賞アンソロジー』についてのトークとなる予定。
なお、スピーカー背後のホワイトボードにあるポスターは伝法さんによる傑作。同デザインでチラシも作成してくださった。
画像は伝法さん公式ブログでダウンロードが可能。
じつはこのチラシ・ポスター制作は松崎がたきつけた、といううわさがありますがこれは事実です。

森下「長編からいきましょう。三島浩司『ダイナミックフィギュア』
震災の直後に出ましたが、よむとふしぎなかんじがします。
ロボットSF+侵略もの+恋愛もの。香川県ご当地SFでもある」
大森「書きあげたもののなかなか出版にはいたらず、紆余曲折のすえ最終的にハヤカワで出した、という『マルドゥック・スクランブル』みたいな経緯の作品です。
しかしSF大賞候補作となり、宮部みゆきさんに絶賛された」
森下「瀬尾つかさ『約束の方舟』は世代宇宙船ものですね。
登場人物がかわいらしい。ライトノベル感覚で。
それから瀬名秀明『小説版ドラえもん のび太と鉄人兵団』
おそらく小学生むけに発注されたものなのでしょうが、大人がよんでもかみごたえがある。
瀬名さんが子供のころからいとおしんでいた藤子不二雄の世界を、大人になってから表現したものです」
日下「いかにも瀬名さんらしく、ドラえもんの秘密道具にもちゃんと科学的説明がある」
大森「いろんなバージョンがあるけど、これがいちばん納得できる『鉄人兵団』でしょう」
森下「北野勇作『きつねのつき』。これ、しばらくお蔵になっていたんですよね」
大森「Twitterで北野さんがつぶやいたのを、河出の編集者がみつけたことで出版がきまった、という経緯」
森下「SF界って、あっちでボツになったのがこっちで評価されて、みたいな話がいっぱいありますよね」
大森「北野さんも『かめくん』で小松左京賞に落ちてるけど、そのあとSF大賞を取ってるし」
森下「牧野修『大正二十九年の乙女たち』。いわゆる歴史改変ものです。
牧野さんらしい作品。

さてつぎは短編集、というか連作短編。
松崎有理『あがり』

うわあ拙著、とあせる松崎。

大森「表題作は星雲賞にもノミネートされてね」
森下「おなじ街を舞台にしたオムニバス。よみやすいしとてもよかった。この本をきっかけにしてSFを手にとってくれる読者がふえるかな、と」
大森「松崎作品には『こんなのSFじゃない』と強固に主張する一部の若手勢力があったり」
森下「すこしずっこけてるけどりっぱなSFだよ。
それと表現が凝ってますよね。でもすんなり入ってくる。

さて、ここからほんとに短編集。小川一水『天冥の標』4と5」
大森「4が、エロ」
森下「発生初期をめんみつに描いてるんです。性行為の表現については小川さんもずいぶん考えたらしい。
刊行は10まで予定されているそうですから、まだよんでないひとはそろそろよみましょう。
そして藤真千歳『スワロウテイル/幼形成熟の終わり』。人形を愛好する話です」
大森「さいきん多いですよね。宮内くんの新作「ヨハネスブルクの天使たち」も、そう」
森下「そして津原泰水『11 eleven』。すごかったですね。すばらしい」
大森「収録作のうち、ぼくの『ゼロ年代SF傑作選』にも収録した「延長コード」というのは、ほんとに延長コードの話なんです。
津原さんどこからアイデアを思いついたのか、というと。
エクストリームアイロニングというとんでもない場所でアイロンがけするスポーツがあるんですよ。それこそエベレスト山頂とか海底とか。
で、そのとき電源はどうしているんだ、と思ったのがきっかけらしい」
森下「「五色の舟」もすごい作品ですよね。日本伝統の幻想小説につらなる」
日下「さいしょのタイトルは大森さんがボツにしたんだよね」
大森「だって「ワンダー5」って。
世代限定だし、作品とまったくちがう連想されてもこまるし」
日下「津原さんっていつも初出がいろんな媒体で、ほんとばらばらなんだよね。
でも、一冊の短編集になるとちゃんとまとまってる」
森下「しっかりしたじぶんの世界があるんでしょうね」

大森「中編集のベストは円城塔『これはペンです』
森下「うん。あれすばらしいです」
大森「「良い夜を持っている」は、泣ける。「これはペンです」は、笑える。
どちらも、よくわからない親族を理解する話。おじさんとのファーストコンタクト、みたいな。
『新潮』という文芸誌に載せたものなので、SFについてはわかりやすく書かれている」

森下「日下さん、短編集は」
日下「瀬名秀明『希望』。いきなり文庫でお得ですし」
大森「いつまでたっても「Gene」がはいらないね」
日下「ホラー系はまたべつにまとめるつもりなのでは」
森下「『希望』は『BRAIN VALLEY』とはぜんぜんちがうよね」
大森「瀬名さんは、SF的にはともかく哲学的にむずかしいことを描くようになってる。SFファンにたいする挑戦では、と」
森下「一読しただけではプロットがわからなかったり」
大森「ラストをどうするか、なんて編集者とのあいだでずいぶんもめたみたいですよ。
それと宮部みゆき『チヨ子』。これも文庫オリジナル。SF・ファンタジー系短編集で、『NOVA2』に掲載した「聖痕」も収録されてます。さいごがあっとおどろくSFになる作品です」
森下「篠田節子『はぐれ猿は熱帯雨林の夢を見るか』
日下「SFとはぜんぜん思えないようで、じつは」
大森「科学ネタ小説。SFか、というとちょっと疑問だな。なぜなら、いま完全にありえない話ではないから。いまここにある技術を篠田節子が描くとこうなる、みたいな」
森下「小川一水『青い星まで飛んでいけ』。おもしろかったね。軽いタッチで。
そして上田早夕里『リリエンタールの末裔』。これすばらしいですね。とくにクロノメータの話が。
技術にたいする上田さんの思い入れがよくわかる。
それから眉村卓『沈みゆく人』。老年ファンタジーです」
大森「部屋の窓から少年時代の自分をみかけて、追いかけていくと50年前にタイムスリップ。いい味を出している。
マシスンやブラッドベリともよく似てる」
日下「眉村さんはむかしからそうだから」
森下「平田真夫『水の中、光の底 』。せっかく出たんだから、もっといろんなひとによんでほしいな。
そして山野浩一『鳥はいまどこを飛ぶか』『殺人者の空』。こんなにかわいらしいSFをかいていたのか、と。
水見稜『マインド・イーター』もね。こんなハードボイルドだったか」
日下「出してみたら意外と評判がよかった本です」

森下「それから、そのほかのカテゴリ。新井素子『銀婚式物語』は、結婚をすばらしいものとうたいあげてる」
大森「子供がつくれなかった、なんてことまで赤裸々に描いてくれてる。
まあ、本棚を最優先にして家を考える、なんてところは、ふつうのひとの結婚生活の参考にはまったくならないけど」
森下「これ、粕谷知世『終わり続ける世界のなかで』とくらべてよむと、ひじょうに対照的。世界とのむきあいかたが正反対だから。
で。ファンタジーノベル大賞つながり。
勝山海百合『さざなみの国』。たんたんと人物を描いているようで、読了後は壮大な感覚が残る」

会場にいた勝山さん、すみません、とお礼をいうと
なんと殊勝な、と大森さんにつっこまれたり。



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