「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」がEAなんかよりぶっちぎりでおもしろい件

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作成日:2017/10/07 最終更新日:2017/10/11 かいたひと:松崎有理

【もくじ】
はじめに
基本情報
魅力その1 なんといってもストーリーがおもしろすぎる
魅力その2 声優さんたちの名演が光る
魅力その3 単語はものすごくやさしい。文法はわりと高度
魅力その4 和訳は青空文庫で、乱歩の原文が読める
まとめ おすすめの勉強法
おまけ 物語属性なひとのための外国語教材そのほか

はじめに

NHKラジオ講座。語学学習の鉄板です。「どの教材を選んだらいいか迷ったら、とりあえずNHKラジオやっとけ」はよくきく台詞。


でも、そうやってNHKラジオにしぼっても、それでも分量がおおすぎるんですよね。たとえば「ラジオ英会話」なんて一回15分、それを月曜から金曜までまいにち。とてもカバーしきれません。それに、なんか内容がつまんない。いやその、ほんとはおもしろいのでしょう。たぶん松崎は、根っから物語属性なのでスキットに向いてないんだと思います。そういえば対談形式の本ってぜったい読まないしね。
それと松崎は、有名な「英語完全上達マップ」に沿って学習しているのだけど、あの「音読パッケージ」って自分がそうとうに好きな題材じゃないとぜったい続きません。スキット系じゃあきちゃうよなあ、とあれこれ試したあげく。
ようやく、ぴったりの講座をみつけました。それがこの「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」。一回たった5分、しかも金曜だけ。いや、ほんとは月〜金なのだけれど金曜日「Rampo in English」だけに限定した、というのが正しいですが。ミステリ小説を原作にしたラジオドラマ形式です。あの「青春アドベンチャー」をつくってるNHKラジオなのですからドラマとしてのクオリティも超一流です。
だから「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」は以下のようなひとに向いてると思います:

・ふつうのラジオ講座は分量が多すぎる
・物語属性(会話文が苦手)
・「英語完全上達マップ」をやってるけど音読教材の選択に迷っている

松崎は2017年度上期の半年間、ききました。あまりにもおもしろくて、かつ英語教材としてひじょうによくできているので、そのすばらしさをどうしてもみなさんに知ってほしくてこの記事を書きました。
それでは以下で、「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」(というより「Rampo in English」)の魅力を熱く語っていきますよ。
#注意:ストーリーについてのネタバレを含みます

基本情報

「Rampo in English」はつぎの2作品です:
・The Man with Twenty Faces(怪人二十面相)2017年4〜6月、10〜12月
・The Shining Man(夜光人間)2017年7〜9月、2018年1〜3月
放送時間 午前9:10~9:15
再放送 午後11:10~11:15
と、いってもストリーミングをきくのが現実的だと思います。
テキストもKindle版を買うのがらくちんです。

魅力その1 なんといってもストーリーがおもしろすぎる

原作は泣く子もだまる江戸川乱歩大先生です。
じつは松崎、乱歩をあまり読んだことがありません。ホラーを書く関係上、勉強として有名短篇をいくつか読んだだけでした。だからもちろん、少年探偵団シリーズはまったくの初体験。
だから、これきいてびっくりしました。カルチャーショックですよ。この番組はたった5分で、前後約30秒ずつナビゲーターの肘井美佳さんがしゃべるので実質4分ほどのラジオドラマなんですけど、ほんとに毎回おどろかされっぱなし。「そうきたかー」「ええっー」「な、なんでそうなるの」「この先いったいどうするつもり」と、4分間叫びっぱなしです、いや誇張でなく。肘井さんも内容につっこみまくっていますが気持ちはよくわかります。とにかく、飽きさせません。さすが少年向け雑誌に連載されていただけのことはあります。「引き」というものがよくわかっています。もっとも今回のばあいは、脚本化したひとの腕もおおいに関わっているでしょう。
でも、じつはなによりおどろいたのは、「The Man with Twenty Faces」ではけっきょくいちども明智小五郎が登場しなかったことだったりして。
やはりストーリーのおもしろさを売りにしている英語教材がありますが、松崎の私見では正直、勝負になりません。「Rampo in English」がぶっちぎりで勝ちです。価格の安さでも勝ってます。だって実質テキスト代500円/月だけですから。とにかく飽きない、おもしろい、しかもコストパフォーマンスのよい英語教材を探してるかた、いちどお試しあれ。

魅力その2 声優さんたちの名演が光る

語学講座とはいえNHKラジオドラマなのだからとうぜんかもしれませんが、出演の声優さんたちがとにかくものすごく上手です。感動します。とくに二十面相の怪演っぷり、あのいかにも怪人っぽい高笑いのすばらしいこと。そして小林少年の小憎らしいほど賢そうな声。このふたりの対決がなんといってもききどころです。あまりの名演ぶりについ学習とか忘れてしまうのが欠点といえば欠点かも。
それともひとつこれもあたりまえですが、声優さんたちの英語の発音もすばらしいです。安心してリピートできます。まるごとまねしましょう。

魅力その3 単語はものすごくやさしい。文法はわりと高度

知らない単語はまったく出てこないくらい、単語レベルはやさしいです。だから一回きいただけでストーリーはわかるのですが、文法は少々むずかしい。仮定法も数度出ましたし、分詞構文はばりばり出てきます。「いやまてこの~ingは分詞構文だろうか現在分詞だろうか」なんて疑問は自力で解決する必要あり。テキストはスクリプトと単語集のみで、文法解説も和訳もありません。
【追記】たんに「やさしい」「高度」だけでは抽象的なので具体的に評価してみます。
・単語=どんなに難しくても attic どまり。これはweblio英和辞典によると「TOEICスコア:730点以上」なんだそうです。でも、ほんとこれひとつだけですよ。
・文法=ようは高校範囲ということです。

魅力その4 和訳は青空文庫で、乱歩の原文が読める

上述のとおりテキストに和訳はないのですけれど、さいわい乱歩の作品はいま青空文庫で読むことができます。ドラマ脚本のほうはそうとうはしょっていますから、原作を読んでフォローしたほうがよいでしょう。たとえば、羽柴家の前にいた壮二と二十面相がなぜみなから見えなかったのか、の理由は、ドラマではさらっと流されていますが原作ではきちんと描かれています。でも、小林少年がどうやって二十面相もだまされるほど本物そっくりの仏像に化けたのかは原作にも書かれていませんでした。ちぇ。

まとめ おすすめの勉強法

「はじめに」でも触れましたとおり、「英語完全上達マップ」の音読パッケージでつかうのに最適です。一回4分X12回のドラマが二本。4分というのは音読にちょうどいい長さだと思います。12回に分割されたドラマはサイクルをまわすのにやはりちょうどよい分量です。
松崎は(あまりにおもしろいので)二本ともやりましたが、やさしすぎると感じる方はどちらか一本にしてつぎの段階に進まれたほうがよいかもです。
え。「どちらがいいか」ですか。むずかしい質問です。内容的には甲乙つけられないので、テーマソングのよさで「The Man with Twenty Faces」に軍配。ピアノ曲がまことにドラマチックなのです。あれ作曲したひと天才。

おまけ 物語属性なひとのための外国語教材そのほか

『金色の眼の猫』
1992年のNHKラジオフランス語講座・入門編を再編したもの。日本人少女マヤとしゃべる猫のペピートが、消えたペンフレンドを探してフランスをさまよう冒険物語です。初級用のため語彙も文法もものすごく限られているのに、きちんとミステリになっていてはらはらわくわく楽しめます。イラストも味があって、松崎はすごくすきです。かなり古い作品なので通貨がユーロでなくフランだったり、コンピュータがひどくディスられていたりしますが、そこはノスタルジーということで許容しましょう。

『フランス文学24人のヒーロー・ヒロインたち』
2010年まいにちフランス語・応用編。フランス古典文学からえりぬきの登場人物を紹介する24回シリーズ。そのメンバーは、カルメン、ナジャ、ボヴァリー夫人、ゴリオじいさん、シラノ・ド・ベルジュラック、にんじん、ザジ、ジュリアン・ソレル、ダルタニャン……と豪華絢爛。文学案内、およびキャラクタ分析の手引きとしても使えます。なにより朗読の音声がうつくしくてうっとりできますよ。
それと、この番組を気に入ったひとはきっと鹿島茂さんの『悪女入門』も好きになると思います。この本も、フランス古典文学からやたら濃いヒロインたちを紹介しています。副読本としてどうぞ。

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松崎有理はプロ小説家です。語学は趣味です。
プロフィール
作品一覧

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嘘の論文、いっぱい書いてみました。

『架空論文投稿計画』カバー
『架空論文投稿計画 あらゆる意味で
でっちあげられた数章』

出版社 光文社
発売日 2017/10/20
単行本、四六判
定価 1600円(税別)
デザインと装丁 宗利淳一
第一章と「ぶぶ漬け」論文まるごと試し読み
●七冊目の単行本は破天荒な変化球。まるで『鼻行類』のようにリアルでおかしな嘘論文が11本も入っています。でも、論文集ではなく小説です。これらのへんな論文は、ひとりの勇気ある研究者が研究不正の実態をあばくため計画した「架空論文投稿実験」用にわざと嘘っぽく書いたものなのです。たとえばそのタイトルは、
「島弧西部古都市において特異的にみられる奇習“繰り返し『ぶぶ漬けいかがどす』ゲーム”は戦略的行動か?」
「経済学者は猫よりも合理的なのか?」
「図書館所蔵の推理小説に“犯人こいつ”と書きこむひとはどんなひとか」
「おやじギャグの社会行動学的意義・その数理解析」
「比較生物学から導かれる無毛と長寿との関係――はげは長生き?」
などなど。タイトルからしておかしいのに、投稿された論文にだれもダメだししてくれません。そんな実験を続けるうち、研究者に妨害の魔の手が。謎の組織・論文警察やその黒幕の正体は。そして主人公に接近する黒衣の超美人ハーフ研究者は敵か味方か。「代書屋」シリーズでおなじみ、敏腕代筆業者のトキトーさんも登場します。
学術業界(架空)裏話にひたっていただくため、専門用語にはていねいに註をつけました。巻末にはショートショートのおまけつき。コスパには自信があります。するめを噛むように味わっていただけたら幸いです。
●もくじ、帯ほかくわしい情報は当サイト内架空論文特設ページよりごらんになれます。

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